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福島の6自治体 田植え再開は約2%
6月11日 7時52分

福島の6自治体 田植え再開は約2%
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東京電力福島第一原発の事故から3年が過ぎたこの春、福島県の6つの自治体では一部の水田でコメの作付けの制限や自粛措置が相次いで解除されました。
しかし、実際に田植えが再開したのはこのうちのおよそ2%にとどまっていることがNHKの取材で分かりました。

原発事故で拡散した放射性物質のために収穫されるコメに影響が出る恐れがあるとして国は、最大で福島県内の12の市町村でコメの作付けを制限していましたが、放射線量が下がり、住民の立ち入りが可能になったことなどから事故から3年が過ぎたこの春、6つの市町村のおよそ5200ヘクタールでは、作付けの制限と自粛措置が相次いで解除されました。
しかし、NHKがこれらの市町村を調べたところ、この春解除された水田の面積のうち実際に田植えが再開したのはおよそ2%にとどまっていることが分かりました。
田植えが再開した面積を市町村別にみてみますと、南相馬市がおよそ111ヘクタールで全体の3.4%、富岡町が1.2ヘクタールで0.2%、浪江町が1ヘクタールで0.1%、大熊町が0.2ヘクタールで0.1%、葛尾村が0.08ヘクタールで0.06%、双葉町は再開した水田はありませんでした。
再開しない理由について、各市町村は水田自体をはじめ、用水路の除染が十分進んでいないことを挙げていて、5つの町と村では出荷を行わない試験的な栽培を行い、コメへの影響を確認したうえで本格的な再開を判断したいとしています。
国は、除染をさらに進めたいとしていますが、自治体からは、風評被害への懸念や長期間、作業ができないことで農家の生産意欲が低下しているという声なども出ていて本格的な再開にはさらに多くの課題が残されています。

南相馬市「農業取り戻せる環境整備を」

南相馬市ではことしの4月から用水路の除染が始まりましたが、農地の除染が始まるのはことしの夏以降になる予定です。
市は除染が遅れている理由について、ほかの地域の除染作業で人がとられ、作業員が十分に確保できないことや、除染で出る土などの仮置き場の確保が進まなかったためだとしています。
風評被害でコメが売れないのではないかという農家の不安に対しては、市は一定の価格で政府に買い取ってもらえる備蓄米の制度などを農家に紹介していく考えです。
また、市ではことしから田植えを再開した農家に対し10アール当たり2万円の奨励金を出して農家の意欲を高める取り組みを進めたいとしています。
南相馬市農政課の龍徹課長は「農地や用水路の除染を進めたうえで、風評被害の払拭(ふっしょく)に努めるなどして生業としての農業を取り戻せるよう環境整備を進めたい」と話しています。

田植え再開に踏み切れない農家

この春、作付けの自粛措置が解除された南相馬市では、農地や用水路の除染が進まないことなどを理由に多くの農家が田植えの再開に踏み切れていません。
南相馬市の農家、渡部紀佐夫さん(72)は江戸時代から先祖代々受け継いできた50アールの水田でコメ作りを続けてきました。
しかし、原発事故が起きた年に田植えを中断し、自粛措置が解除されたことしも田植えを再開できていません。
その最大の理由は、水田や用水路の除染が進まないためです。
渡部さんが放射線量を測定すると、水田は高いところで1時間当たり0.25マイクロシーベルト、用水路も0.31マイクロシーベルトあり、いずれも国が除染の必要があるとする数値を上回りました。
渡部さんはことし、少しでも早く除染を進めてもらおうと自分の水田の一部を除染で出た土などを一時的に保管する仮置き場として提供することに同意しました。
しかし、去年、南相馬市では試験的に栽培したコメから国の基準を上回る放射性物質が検出されたこともあり、仮に除染を終えても風評被害によってコメが売れなかったり価格が安くなったりするのではないかという不安を抱えています。
去年、渡部さんの地区で行ったアンケート調査でも33人の農家の半数近くが除染の遅れや風評被害への不安を理由に田植えの再開を見送ると回答しました。
さらに渡部さんは東京電力から支払われる賠償金を受け取っていますが、このままでは農家として働く意欲がなくなってしまうと危機感を抱いています。
渡部さんは将来的には水田を同居する息子に引き継ぎたいと考えていますが、最近は難しいと感じるようになったといいます。
渡部さんは「このままの状態が続くと地域でも若手の担い手がいなくなってしまう。安心してコメ作りができる環境を作るために少しでも早く除染を進めてほしい」と話しています。

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