旅客船沈没:法廷に立つ船員たち、怒りをぶつける遺族たち

旅客船沈没:法廷に立つ船員たち、怒りをぶつける遺族たち

 目を真っ赤に腫らした遺族が「お前たちは人間なのか。けだもの同然だ」と書かれたプラカードを掲げてバスから降りてきた。旅客船「セウォル号」沈没事故の犠牲者の遺族約90人が、10日午前9時30分ごろ、バス3台に分乗して京畿道安山市を出発し、午後1時40分ごろ光州地裁に到着した。檀園高校の生徒イ・ギョンジュさんの母親は「裁判を傍聴すれば、事件が思い出されて心が痛むが、真実が十分明らかにされなければならないと思い、裁判を見守っていくことにした」と話した。

 ほどなくして、全羅南道珍島郡の彭木港から車でやってきた行方不明者の家族4人と遺族2人も光州地裁に到着した。行方不明者の父親は「息子がまだ見つからないので、われわれはまだ闘っている最中だ。(船員らが)子どもたちに『脱出せよ』と指示していれば、こんなことにはならなかった。真っ先に逃げた船員らには当然、殺人罪が適用されるべきだ」と語った。

 一般乗客で行方不明になっているクォン・ジェグンさん(52)の兄は「片時も忘れることなく、あの連中(船員)を恨んでいる。あの連中がきちんと対処してくれれば(弟は)助かったのに」と話した。

 家族が法廷に入ろうとしたとき、地裁の関係者たちが立ちはだかり「法廷にプラカードを持ちこむことはできない」と告げた。これに対し、プラカードを持った家族だけでなく、周囲にいた家族も憤った。ある家族は「殺人鬼のイXX(隠語。イ・ジュンソク船長のこと)どもを殺さなければいけない。殺してやりたい」と叫んだ。数分間もみ合いが続いて入り口がふさがり、別の家族が「こんなことをしていたら(開廷に)遅れる」と説得して、ようやく騒ぎが収まった。

 裁判に先立ち、家族対策委員会のキム・ビョンクォン代表は家族を代表し「徹底的に真実を解明し、被告人らを厳しく処罰してほしい」という意見を地裁に伝えた。その上で「被告人らは乗客が死のうとどうしようと関係ない、死んでも仕方ないと考えていたことは明らかだ。それが殺人でないとすれば、何が殺人なのか。被告人らは乗客だけでなく、家族の魂も殺した」と述べた。

 午後2時30分ごろ、裁判が本格的に始まると、7人の遺族が「300人の尊い命を踏みにじった船員を私たちの税金で食わせるのはもったいない」と書かれたプラカードを法廷の入り口で掲げ、無言のデモを行った。

 裁判を傍聴した檀園高校の生徒の父親コ・ヨンファンさんは、法定から出てきて「自分の足で船から脱出した船員が『けがをして混乱状態だったため、知らず知らずのうちに船から脱出した』と証言した。気が狂いそうだ」と怒りをあらわにした。コさんはまた「船長が『自分は6日間だけの臨時船長で、1等航海士や2等航海士にあれこれ言う権限はなかったから、自分に法的な問題はない』と言っていた。あんな言葉を聞くためにここに来たのかと思うと、苦々しい思いだ」と語った。

 初公判が終わった午後6時ごろ、檀園高校の生徒パク・ヘソンさんの母親は「法廷に立った船員らは互いに責任を押し付け合うなど、反省している様子が感じられなかった。犠牲者たちがあの世で幸せになれるよう、船員たちは真実を明らかにし、その罪を必ずや償うべきだ。殺人罪で処罰されなければならない」と話した。

 約20人の遺族は初公判が終わった後も裁判所を出ようとせず、裁判所前のアスファルトの上に1時間余り座り込んで「うちの子を帰してくれ」と泣き叫んだ。

光州= イ・ギムン記者
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