【外国人のお悩み紹介コラム】治安が良いはずの日本でなぜビニール傘は盗まれるのか?
六月といえばジューンブライドという国があるかもしれないが、日本は違う。六月の日本と言えば「梅雨」である。曇りや雨が多く、湿度も高く、洗濯物が乾かない、食べ物にカビが生えやすいと何かと注意が必要な季節なのだ。そんな梅雨の日本での必需品、それは傘である。その傘にまつわる悩みが投稿されていた。
「治安が良いと言われている日本ですが、なぜか傘だけはよく盗まれるんですよね。何か防止対策はないでしょうか」(ニュージーランド)
質問者であるニュージーランドの御仁は「なぜか傘だけはよく盗まれるんですよね」と、盗まれることを受け入れているようだが、そもそもとしてなぜ盗まれるのだろうか? 「ビニール傘はどれも似ているので、間違って持っていっている可能性もあります。あとビニール傘は安いので使い捨て感覚の日本人も多そうですね」とコメントを寄せている日本人もいる。
カルチャージンで連載をしている心理学者の内藤先生とこの件について話してみたところ「罪悪感がないのでしょう。日本人にとって、傘はそれほど思い入れがないので、『これを盗まれたら、本人が悲しい思いをするだろう』という共感性が働きにくいと考えられます。盗まれたほうも、『傘ならいいか』というところもあります。日本人にとって傘は、空気と同じようにありふれたもの。盗む側に罪悪感もなく、盗まれる側にもそれを許容してしまう、というところがあるのではないでしょうか」とのこと。
さらに真理をつく一言が。
「その証拠に、雨の日に、電車で傘の置忘れが多いでしょう? 思い入れのあるものなら、忘れませんよ。それに、もしうっかり忘れても、それが大切なものであれば、必ず駅に電話をし、返してもらいますよ。そうしないのは、『なくなっても、ま、いいか』という気持ちがあるからです。そういうものだとみんな分かっているから、盗むほうも気がとがめないのです」(内藤先生)
筆者はビニール傘を使わないが、少々値が張る雨傘を購入し、愛用していた時期があった。うっかり車内に忘れないよう、手すりなどにかけることなく、両手で握り締めていたのだが、居眠りをしてしまい、気づくと降りる駅で、慌てて飛び起き電車を降りた。すると傘がなく、どうやら居眠りしている最中に手から傘が滑り落ち、慌てて電車を降りたため、傘を落としたことに気づかなかったのだ。「しまった!」と思った筆者は後日終点の駅まで傘を取りに行ったことがある。だが、ここまでの執着を傘に持つ人は少ないであろう。筆者もその雨傘がビニール傘だったら、わざわざ後日取りに行くことがなかったと思う。
傘を盗む人がいる理由はこれで解明した。残る問題は、「どうしたら盗まれないのか?」ということであろう。その方法としてはいくつかの回答が寄せられていた。
「盗難防止対策として、最近は傘の持ち手が外せるものが販売されています。持ち手がなければ盗んでも使えないので、アイデア商品だと思います」(ニュージーランド)、「私はビニール傘ではなく、きちんとした傘を持ち歩いています。きちんとした傘だと、持ち主自身も例えば店の入口の傘立てにいれず席まで持っていくし、傘を盗む(?)人も躊躇する気がします」(日本)、「折りたたみ傘を買うといいよ」(アメリカ)など実にさまざまである。
日本=治安がいいというイメージが外国人の中にはあるようで、その日本で傘を盗まれるという驚きから今回の投稿があったのだと思うが、日本人としても「なぜビニール傘は盗まれるのか」という疑問を改めて持つことができ、またその謎を解くことができた。この質問を投稿してくれたニュージーランドの方、ありがとう!
元の質問と回答はコチラ
ということで今回は「なぜビニール傘は盗まれるのか」という疑問をご紹介した。次回もお楽しみに!