2014年6月11日12時01分
製薬大手ノバルティスの高血圧治療薬ディオバンに関する臨床研究の論文にデータ不正があった事件で、東京地検特捜部は11日、データを不正に操作したとして、同社元社員の白橋伸雄容疑者(63)=神戸市=を薬事法違反(誇大広告など)の疑いで逮捕し、発表した。一連の論文不正問題は、製薬会社の元社員が刑事責任を追及される事態に発展した。
特捜部の発表などによると、白橋元社員は京都府立医大がディオバンの効果を調べるために実施した研究で、データの解析を担当。同大が2011年に投稿した論文のなかで使われたデータを不正に操作し、その結果を論文を執筆する医師らに提供。この論文を海外の医学雑誌に掲載させた疑いがある。
ディオバンは、ノバルティスが2000年から国内で販売する高血圧治療薬。02~10年に京都府立医大のほか、東京慈恵会医大、滋賀医大、千葉大、名古屋大の計5大学が臨床研究を実施。京都府立医大と慈恵会医大の論文は、ディオバンが他の高血圧治療薬より、脳卒中や狭心症を防ぐ効果が高いと結論づけた。だが昨年春、これらの論文作成に白橋元社員が関与していたことが発覚。京都府立医大などが、論文に不正や不適切なデータ操作があったとの調査結果を公表した。
この問題では、厚生労働省が今年1月、ノバルティス日本法人に対する同法違反容疑での告発状を東京地検に提出。特捜部は2月に、同社や京都府立医大などを家宅捜索していた。
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〈ディオバン〉年間売上高1千億円超の人気薬。「ディオバンは他の薬より効果が高い」とする京都府立医大などの論文を、ノバルティスが医師向けの広告に繰り返し利用。同医大など5大学の論文を使った雑誌広告などは、2006年以降で495種類に及ぶ。
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朝日新聞社会部
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