5日から9日にかけ県内で降り続いた大雨で、全国一の収穫量を誇る本県の二条大麦(ビール麦)に深刻な被害が出ている。2大産地の栃木、小山両市を中心に、実が穂に付いた状態で発芽する「穂発芽」が相次いで発生。大半が出荷できない事態となった。小山市によると、同市内の被害額は10日現在、概算で年間生産額の4分の1に当たる約1億7千万円に上り、市全域で被害が発生した栃木市も同日、市職員が状況把握を急いだ。生産者らは「いよいよ収穫という時だったのに」と無念さをにじませた。
穂発芽は、発芽の際に実で蓄えた栄養分を使ってしまい、実の品質が低下する。県農業試験場によると、ビールは製造工程で発芽させるため、穂発芽の麦は出荷できないという。同試験場は「大雨の前に高温の日が続いたため、休眠が解除されたのが原因では」と指摘する。
栃木市大平町新の農業永田久男さん(59)は「35年間麦を作っているが、こんな被害は初めて」と肩を落とす。22ヘクタールで例年約100トンを生産するが、ことしは収穫済みの3ヘクタール以外は「全滅」。この後に稲作を控えるため10日、刈り取り作業を急いだ。本来なら待ちに待った収穫の時期だが「捨てるための作業。身は入らない」とこぼした。
永田さんは10日までに、同様の被害を受けた同市内の農家9戸とともに、県と同市に要望書を提出。「来年再生産できるだけの力を貸してほしい」と求めた。
作付面積の3割弱に当たる350~400ヘクタールが被害を受けた小山市でも、生産者がコンバインでの刈り取り作業に追われた。同市大本の松沼基安さん(62)は「出荷できないので堆肥にする」と諦めた様子で話した。