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仕事と家庭の両立なんて、目指すのやめたらどう?

本文の前にひとつお知らせです。

<ご注意ください>

私の写真を無断使用し、「ちきりん」と名乗って、私が過去につぶやいた内容などをそのままコピーしてつぶやいている偽の(成りすましの)ツイッターアカウントが出現しています。

私のツイッターアカウントは https://twitter.com/insideChikirin ( @InsideCHIKIRIN 、下記)です。

画像と「ちきりん」という名前はパクり使用が可能ですが、@の後の、InsideChikirin という部分は、私の本物アカウントのみでしか使えない部分です。皆様がフォローされている「ちきりん」アカウントの、この部分のスペルを(最近、フォローを始めてくださった方は特に)よくご確認ください。

また、上記とは別に、私のブログタイトルやブログの内容とリンクをつぶやきながら、そのリンク先が(私のブログエントリではなく)、情報商材の販売ページとなっているアカウントも確認されています。

その他にも、複数の偽アカウントがあるようです。十分ご注意ください。

以下、本日の本文です。

仕事と家庭の両立なんて、目指すのやめたらどう?

先日テレビで、二人の子供を持つ夫婦で、女性側が関西に単身赴任してる例が取り上げられていました。

母親の勤める会社には、育児や介護のために転勤を数年間猶予する仕組みもあるのですが、この女性は、「その制度は子供が学校に行き始め、いろいろ相談にのってあげたいタイミングで使いたい」と考え

子供が小さい今はあえてその制度を利用しないと決めたとのこと。ちなみに、子供は 2歳と 5歳くらいでした。

また、今回の転勤により女性は、出産後、働く時間を抑えるために就いていた内勤の仕事から(花形の)営業に戻れており、転勤を避けなかったことでキャリアアップにもつながったとのこと。

一方の男性(父親)は、東京で二人の子育てをしながら働いているのですが、「会社には申し訳ないと思うけど、残業はしないという働き方をさせてもらっている」と。もちろん保育所を利用してます。

夫曰く、「大変だけれど、妻が子育てのために仕事をセーブしているのは申し訳なかった。だから今は自分がサポートしたい」とのこと。すんばらしいですね。

また、母親は毎週末、関西から東京に戻ってきてるほか、毎朝、インターネットを使って、子供&夫といっしょに(画面の向こうで同時に)朝ご飯を食べている。

と紹介されてました。

これ、まとめるとこんな感じ↓です。

・女性も男性も、正社員として働いている

・女性が働く会社では、女性にもキャリアアップの機会が与えられている。

・同時に、本人が望むなら、介護や育児のために転勤を数年猶予する制度もある。

・加えて、これも本人が望むなら、内勤の仕事に異動し、仕事をセーブしながら働くという選択肢も選べる。

・男性の会社も、子育てのために一切残業しない働き方を認めてくれている。

・男性はイクメンどころではなく、平日は自分ひとりで二人の子供を育て、家事をこなすだけの覚悟をもっている。

・夫婦、子供とも健康で、親の介護などの問題はまだ発生していない(ようでした)

つまり夫婦ふたりとも、勤める会社にも能力にも健康にも恵まれ、見事、

「仕事と家庭の両立に成功してる」

わけです。

で、あたしの質問は、「みんなホントにこんな生活がしたいの? これが理想?」 ってことです。

就活中の女子ってすぐに「仕事と家庭の両立は可能ですか?」みたいな質問をするけど、そういう子達って、こういう生活に憧れてるの?

ちょっぴり想像力のある人ならわかるはず。こういう生活が、どれだけ大変か。

月曜から金曜日までバリバリと仕事をこなし、金曜の夜に新幹線に飛び乗り、月曜の早朝に東京駅に向かう。

そのためには洗濯や掃除などすべての家事を、平日、仕事が終わった後に片付ける必要がある。関西の家は「寝るだけ」の家でしょう。

しかも、せっかく数年間、違う地域に住んでいるのに、その地の文化を経験するために使われる週末はひとつもない。       

ふたりともおそらく、自分の趣味に使う時間はほぼ皆無だろうし、それどころか、自分たちの健康を維持するための十分な睡眠時間だって、確保できてない可能性が高い。

年老いていく自分の親と時間を共有したり、友人達との時間や、自らの新しい可能性や視野を開くであろう社会的な試みに参加したりする時間も、ほぼとれないでしょう。みんなが疲弊し、余裕がなくなってしまってる家庭だってあるはず。

コレが本当に、みんなが求めてる「家庭と仕事の両立」? 

ゴールを間違えてたら、苦労してそこに到達しても、誰も幸せになれない。だからよく確認してね。これが、この二人のしている生活が、みんなの理想なの?

政府は、みんながこういう生活をできるように、

・企業に育児休暇や介護休暇の制度を整備するように求め、

・男性に育児や家事を積極的に分担するように求め、

・女性にもキャリアアップの機会を与え、男性には、残業のない仕事のやりかたを求め、

・保育所を整備しようとしてるの?

長期の海外出張や転勤は断り、たとえ緊急かつ重要でも夕方に始まるミーティングには出席せず、大事な顧客との関係を深められる機会であっても、会食には一切でない。

それでも仕事において、自分が納得できる成果を上げ続けられる人なんて、男性であれ女性であれ、相当に仕事のできる人だけだよ。

たとえ 10時から 16時までの時短で働いていたとしても、夫が“そこそこ”のイクメンであったとしても、子供二人育てながら週に 5日、正社員で働く女性の忙しさ(てか、テンパってる度合い)は生半可なモノじゃない。

別の姿も考えてみて欲しい。

女性に、キャリアアップにつながる関西転勤の話が出たとき、男性側が仕事をやめて、家族で関西に引っ越す。

家族四人で数年間、関西に住む。最初の一年は、男性は育児と家事を担当し、その後は、関西で就職して仕事をする。もちろん週末には、家族みんなで京都など、関西の名所を楽しむ。

何年か関西で働いた後、男性側に、香港でおもしろい仕事をしないかという誘いが舞い込む。今度は女性が会社を辞めて、一家全員で香港に引っ越す。

香港で最初の一年、女性は現地の大学付属の語学学校に通い、英語と中国語を習う。香港ではお手伝いさんも雇えるので、家族の時間も確保できる。

男性は日本にいるときに誘われた会社で働き、その後、女性は香港で新たな職を見つけて働く。

こっちの方が、目指すべき姿じゃない?  

これなら家族は一度も離れずに済むんだよ。幼い子供を二人おいて、片親が単身赴任するよりはよほどいいでしょ。週末ごとの移動に使ってた時間とお金は、他のことに使えるようになるし、縁あって住むことになった土地を、家族みんなで楽しめる。

転職を繰り返すなんて難しすぎるって? だから言ってるじゃん。仕事とか家庭の両立だって十分に難しすぎるんだってば。

どっちも“無理ゲー”と言えるほどに難しいんだけれども、じゃあ「実現できたら嬉しいのはどっちなの?」っていうのが、私の質問なんです。

どう考えても二番目の姿のほうが、いいと思いません?

なのになんで、こっちをゴールとして目指さないの?

★★★

理由は簡単です。終身雇用を前提として、すべての社会問題を解決しようとするからだよね。

その(無茶な)前提条件を外さないから、睡眠時間もまともにとれなくなるような過酷な生活を「仕事と家庭の両立」とか言って、みんなで目指すことになる。

子育てで一回、会社を辞めたら、同じレベルの報酬がもらえ、同じレベルのチャレンジと成長機会が得られる仕事には、もう二度と就くことができない。

だからどんなに過酷な状態でも、仕事はやめずに「家庭と仕事を両立させねば! ブヒー!」みたいな話になる。

日本の労働市場における「抱え込み発想」が生む両立神話が、多くの人を疲弊させてる。

この“仕事と家庭の両立神話”って、本当に罪が大きいよね。両立できて当たり前? 冗談でしょ。あんな大変なことができるのは、環境に恵まれた上、めっちゃ能力(もしくは根性か思い込み)のある、ごく一部の人だけです。

両立は、できたら偉いしスゴイですが、「できて当たり前」なんかじゃありません。出来ない人が卑下する必要も、焦る必要も、肩身を狭くする必要もないんです。

最後にコメントを求められた(関西に単身赴任中の)女性は、「本当は家族みなで一緒に住むのがいいんだと思うんですけど・・・でも、自分で選んだ道ですから」といって涙ぐんでた。

そりゃそうだよね。2歳と 5歳の子供と離れて単身赴任してる生活を、「ベストな生活です!」とは言えないでしょう。

だったら、

「仕事と家庭が両立できる社会」ではなく、

「両立なんてできなくても、なーんら問題のない社会」を目指したほうがいいのでは?

「 23歳で新卒就職した会社に 65歳までの 42年間、勤め続けなければならない」という前提の上で家庭と仕事をむりやり両立させようとする社会ではなく、

数年間のインターバルや、非正規雇用の時期や、(夢を追うとかモラトリアムとか含め)人生において個人的な試行錯誤をしていた数年間を挟んでも、いつでもやりがいと適切な報酬を得られる仕事に戻れる、そういう流動性の高い社会をこそ目指すべきでは?

いえもちろん、みなさんが、今日紹介した二人のような「仕事と家庭を両立してる」状態を、

「素敵! こんな制度の整った会社に勤めたい!」とか、

「素敵! こんな理解のある男性と結婚したい!」と思い、

心から羨ましくて、自分も是非そういう生活がしたいというなら、それはそれでいーですけど。

そんじゃーね

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