震災直後の緊急小口貸し付け 融資の5割超、48億円未回収
東日本大震災直後に岩手、宮城、福島3県で実施された緊急小口資金特例貸し付けで、融資金の半分以上が返済されていないことが10日、分かった。未収額は計48億4500万円に上る。所在不明の利用者が1万人に上り、原資を提供した県などは多額の債権放棄を迫られそうだ。
3県の貸し付け実績は、6万8272件(計96億2700万円)。大部分が2011年3〜5月に取り扱われた。3年以内の完済を求めているが、返済が終わったのは約2万2000件にとどまる。未収分のうち1万件程度は債務者の所在がつかめていない。
県別の貸出額と未収額は表の通り。未収金額が最大の宮城は、暴力団組員の不正利用が124件判明した。利用者の自己破産で233件が回収不能になっている。
福島は所在不明が8300件と、県全体の3割以上を占めた。福島第1原発事故で広域避難を強いられたことなどが影響し、回収率も3県で最も低い48.5%となった。
対照的に岩手は67.2%を回収。貸し出し件数、金額とも比較的少なかったのが要因とみられる。
貸し付けの原資は国、県の公金。実施主体となった各県の社会福祉協議会は利用者に督促状を送付したり、電話で所在確認を進めたりしている。
各県社協は面会して返済を促す方針だが「被災による生活苦も想定される」(関係者)だけに強制的な回収には慎重だ。ただ、踏み倒しなどの悪質ケースについて、宮城県社協は「法的手段を検討する」という。
阪神大震災でも同種の貸し付けで全体の3割超の33億6000万円が回収不能になり、国と兵庫県が債権放棄した。
社会福祉行政に詳しい太田伸二弁護士(仙台弁護士会)は「社協に債権回収ノウハウはなく予想された事態だ。貸し付けではなく、避難名簿などに基づく給付制度の創設が求められる」と話す。
[緊急小口資金特例貸し付け]本来は低所得者に当面の生活費を融資する公的制度。市町村社協が窓口となり、特例として東日本大震災の被災者にも適用された。1世帯当たり原則10万円以内。無利子、無担保で保証人不要。融資後3年以内に完済する必要がある。
▽特例貸し付け 被災者救済ないがしろ? 仙台市社協へ17億円未返済
http://www.kahoku.co.jp/special/spe1062/20140611_01.html
2014年06月11日水曜日