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津波石で津波の発生時期や規模を確認 東北大グループが沖縄で調査

 過去の津波で沖縄県石垣島に打ち上げられた二つの津波石の磁気を調べ、津波の発生時期や規模を突き止めることに、東北大大学院理学研究科修士2年の佐藤哲郎さん(24)らの研究グループが、世界で初めて成功した。津波石は日本だけでなく、太平洋の沿岸各国に点在している。地域を襲った過去の津波の履歴の解明につながり、発生頻度の把握や将来の被害規模想定の精度向上に役立つと期待される。
 石垣島の津波石は、サンゴ礁が津波で破壊されてできた。サンゴは成長過程で磁気を持つ微少鉱物を取り込んでいて、南から北に向かう地磁気を残留磁気として記録していた。
 波の力で移動した津波石は新しい方向の地磁気を帯びる。グループは残留磁気の配列や強さを解析することで、津波の年代や津波石の移動回数を特定できる点に着目した。
 200トン級と35トン級の津波石を分析したところ、それぞれ約2000年前と約240年前の津波が起源と判明した。地震の記録から、35トン級を動かしたのは1771年に石垣島を襲った八重山地震津波と推定。その際に200トン級は移動しておらず、約2000年前の津波の方が規模が大きかったと結論付けた。
 指導に当たる中村教博准教授(地球電磁気学)は「津波石の詳しい移動を確かめ、具体的な津波の姿をシミュレーションで求めれば、より正確に過去の津波の規模を推定できる」と説明する。
 現在、グループは岩手県内3カ所で、津波石とされる岩を調査している。佐藤さんは「ひたすら磁気を測定する作業を繰り返したことが、成果につながった。東日本大震災を経験した自分の研究が、防災に少しでも役立てばうれしい」と話す。
 成果は、米地質学会誌「ジオロジー」のオンライン版で公開された。

[津波石]津波の高い水圧により、海中や海岸付近から陸上に運ばれた巨石。サンゴ礁などの岩礁も津波で一部が引きはがされ、津波石になる。東日本大震災でも岩手、宮城両県で確認されており、気仙沼市唐桑町の入り江には五つの巨石が打ち上げられた。


2014年06月11日水曜日

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