20年東京五輪:会場計画見直しへ 「ぬか喜びできぬ」 市民団体、評価と懐疑 /東京
毎日新聞 2014年06月11日 地方版
「再検討作業を進めていきたい」。舛添要一知事が10日、2020年東京五輪・パラリンピックの会場計画全体を見直す考えを明らかにした。現行計画を疑問視し、見直しを求めてきた市民団体のメンバーらは、知事の発言を評価しつつも、慎重に推移を見守る姿勢を示した。【和田浩幸】
「代替地への変更が正式決定していない以上、ぬか喜びはできない」。葛西臨海公園(江戸川区)のカヌー・スラローム競技会場整備に反対する「日本野鳥の会東京」幹事の飯田陳也(のぶや)さん(67)は、舛添知事がカヌー会場見直しに言及したことにも、厳しい態度を崩さなかった。
同公園には絶滅危惧種を含む希少動植物が数多く生息しており、日本野鳥の会などは招致決定前から計画変更を求めてきた。開催決定後は、公園に隣接する都有地を活用するよう代替案を示したが、都からの具体的な反応はなかったという。
飯田さんは「一歩前進と言えるが、まだ何も決まっていない。今後も要望を続ける」と気を引き締めた。
また、馬術場が整備される予定の夢の島競技場(江東区)では、現在の野球場が取り壊され、地元住民らのスポーツの拠点が失われることが懸念されている。終戦直後から活動を続ける江東区軟式野球連盟理事長の下高山春造さん(62)は「五輪も大事だが、地域スポーツも大事。代替施設を確保するなり一部施設を残すなどの措置を検討してもらいたいが、今は状況を見守るしかない」と話す。
一方、舛添知事は国が建設費を負担する国立競技場(新宿区)の建て替え計画の見直しについては、明言を避けた。現行案に反対し、5月に現競技場の改修案を示した世界的建築家の伊東豊雄さん(73)は「規模などについて疑問点が多い国立についても当然見直すべきだ。その上で我々一般の建築家も議論に参加させてほしい」と訴えた。
◇カヌー・スラローム 「自然環境を保護し、区内実施なら歓迎」−−江戸川区
カヌー・スラローム競技会場の見直しについて、江戸川区の広報責任者は「葛西臨海公園ではない場所に会場を移してほしいと都に伝え続けてきた。水辺の自然環境を保護しながら、見直し後も区内でカヌー・スラローム競技が行われるなら歓迎したい」と話した。計画見直しに関して、都から事前に連絡はなかったという。