「小峰隆夫の日本経済に明日はあるのか」

出生数を増やす好機を逃した日本

改めて考える人口問題(3)

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2014年6月11日(水)

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 人口問題は率で議論されることが多い。日本の人口変化としては、「少子化」「人口減少」「高齢化」などがあるが、少子化については「出生率」、人口減少については「人口減少率」、高齢化については「高齢化率」で議論されることが多い。いずれも「率」の議論だ。

 本シリーズで取り上げている人口オーナスについても、私は「生産年齢人口の比率が低下していくこと」が本当の問題だと考えてきた。これも率で見ていたわけだ。私は前著『人口負荷社会』(2010年、日経プレミアシリーズ)を出した時には、「人口問題の基本は率だ」と考えていた。

 しかし、その後いろいろ議論してみると、人口問題の深刻さは「率」だけでは捉えきれないことが分かってきた。「人口問題は率も重要だが、それに劣らず数も重要だ」ということなのだ。今回はこの点について述べよう。

出生率と出生数

 まず、少子化、人口減少問題について考えよう。この点でしばしば議論の的になるのは「合計特殊出生率(平均的な1人の女性が一生の間に産む子供の数、以下単に出生率という)」だ。この出生率は、人口減少と大きく関係している。出生率が2をやや上回るレベル(日本の場合は2.07)であれば人口は減らないからだ(これを「人口の置き換え水準」という)。

 日本の出生率は、1947年には4.54だったが、その後一貫して低下を続け、1959年には置き換え水準を下回り(2.04)、2005年には1.26にまで下がった。その後、出生率はやや回復し、2013年には1.43となった。こうした動きを見ていると、日本の出生率をめぐる状況は、最悪期を脱し、徐々に改善しつつあると考えたくなるが、必ずしもそうとは言えない。この点は今回の議論とはあまり関係しないので、簡単に説明すると次のようになる。

 合計特殊出生率は、ある一時点での年齢別の出生率を合計したものである。すると、晩産化の初期に子供の数が減ると、一時的に合計特殊出生率は低下し、その晩産化で子供が生まれるようになると、出生率が上昇するということが起きる。ここ数年合計特殊出生率の回復がどの年齢層で生じているかを見ると、30代以上の年齢層での上昇が目立つ。ということは、ここ数年の日本の出生率の回復は、晩産化の影響だと考えられる。

 要するに、これは、これからの出生率の回復をなんら保証するものではなく、より若い層での出生率回復がない限り、やがて出生率の上昇は止まるということである。この点については、既に当サイトに書いたことがあるので、詳しくはそちらを見てほしい(「3年連続の上昇で少子化傾向は反転したのか?」2009年7月10日)。


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