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経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層
【第138回】 2014年6月11日
著者・コラム紹介バックナンバー
熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト],高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]

「平成26年財政検証」の中身は楽観的
公的年金に依存できなくなる未来に備えて
――熊野英生・第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト

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「平成26年財政検証」を見て考える
年金の将来収支予想は非常に楽観的

 6月3日に社会保障審議会年金部会が「平成26年財政検証」を発表した。私たちの年金の将来像が、そこには複数のシナリオとして掲示されている。

 筆者は年金の専門家ではないが、開示された資料を見ながら、表計算ソフトEXCELにデータをダウンロードして、自分なりに年金収支の計算をしてみた。

 結論から申し上げると、2017~2023年度にかけて非常に楽観的な前提で、年金の将来収支が予想されている。用意された複数のシナリオのいずれもうまく行かなかった場合に、年金収支をどう調整していくのだろうかと、疑問を抱かざるを得ない。

 このレポートでは、財政検証そのものの細かい数字を紹介することは差し控えて、重要なポイントだけを押さえたい。

 まず楽観的な前提とは、2014~2023年度までのシミュレーションが、内閣府「経済再生ケース」と「参考ケース」に基づいていることである。財政検証では8つのケースが用意されているが、それは2024年以降のシミュレーションであり、2014~2023年度までの期間については、ともに楽観的な2つのシナリオでつくられている。

 具体的には「経済再生ケース」は、10年間の平均値で見て消費者物価上昇率が2.22%、名目賃金上昇率3.32%、運用利回り3.24%となっている(図表1参照)。それよりも控えめな「参考ケース」でも、消費者物価1.55%、名目賃金上昇率2.36%、運用利回り2.47%という数字である。

 そうした前提を使って年金収入が計算されたとき、アウトプットされた将来収支はどうなるのか。2012年の厚生年金・共済年金の収支は、▲5.9兆円の赤字という実績である。それに対して「経済再生ケース」では、2018年度に黒字化することになっている(次ページ図表2参照)。「参考ケース」の前提では、2019年度に黒字化できる見通しになっている。

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熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]

くまの・ひでお/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 山口県出身。1990年横浜国立大学経済学部卒。90年日本銀行入行。2000年より第一生命経済研究所に勤務。主な著書に『バブルは別の顔をしてやってくる』(日本経済新聞出版社)など。

森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]

もりた・きょうへい/1994年九州大学卒業、野村総研入社。98年~2000年米ブラウン大学大学院に留学し、経済学修士号を取得。その後、英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所経済調査部を経て、08年バークレイズ・キャピタル証券入社。日本経済および金融・財政政策の分析・予測を担当。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)など。2010年7月より、参議院予算委員会内に設置された「財政再建に向けた中長期展望に関する研究会」の委員を務めている。

 

高田創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]

たかた はじめ/1958年生まれ。82年3月東京大学経済学部卒業、同年4月日本興業銀行入行、86年オックスフォード大学修士課程修了(開発経済学)、93年審査部、97年興銀証券投資戦略部、2000年みずほ証券市場営業グループ投資戦略部長、06年市場調査本部統括部長、チーフストラテジスト、08年グローバル・リサーチ本部金融市場調査部長、チーフストラテジスト、11年より現職。『銀行の戦略転換』『国債暴落』『金融市場の勝者』『金融社会主義』など著書も多い。


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