これまでの経緯
昨年末に成立した特定秘密保護法の施行を12月に控え、政府では特定秘密の指定・解除等の基準と政令の素案、そして監視機関の検討が進められている。一方の国会では、特定秘密の運用を監視する機関と、特定秘密の提供を政府から受けるための制度の検討が行われ、5月30日に国会法の改正法案などが提出された。
特定秘密保護法には、国会とかかわる3つの規定がある。一つ目は、政府が国会に特定秘密の提供をする場合の条件(法10条1項1号)。二つ目が、特定秘密保護法の運用状況について政府から報告を受けるというもの(法19条)。三つ目が、特定秘密の提供を受けるために必要な措置を国会が検討して講ずることを定めたものだ(附則第10条)。
政府・国会の監視機関の設置は、特定秘密保護法の国会審議の終盤で、自民・公明の与党と、維新の会・みんなの党の間の「4党合意」によって決められた。特定秘密の運用状況についての報告を国会が受けるという特定秘密保護法の規定は、国会での修正により設けられた。国会の監視機関は、政府から運用状況の報告を受け、監視を行う受け皿となる。
しかし、特定秘密の指定・解除等の監視をするための十分な調査審議をするための機能が備わっていると言い難い。また、監視機関は与党会派が多数を占め、国会の会議としては例外的に、非公開を原則とした会議運営が行われることになるため、与党を中心とした監視活動の実効性には疑問もある。
衆参両院に設置される「情報監視審査会」の概要
衆参両院に設置される情報監視審査会(以下適宜、審査会)は、常設の8名で構成され、各会派の議席数に応じて委員数が割り当てられる。衆参の議長および副議長は、審査会に出席をして発言できるとされている。会議は非公開で行われ、事務局の職員は10名程度。職員に対しては、特定秘密を取り扱うための適性評価が実施される。
監視の対象は、「特定秘密の指定、解除、適性評価の実施状況」だ。監視活動は(1)毎年の政府からの報告、(2)職員による調査・行政機関の長からの説明聴取により行われ、さらに(3)必要に応じて政府に特定秘密の提供を求めることができる。調査審議の結果、問題等があれば政府に対して運用改善を勧告することができるが、法的拘束力はない。
特定秘密保護法を国会が成立させた以上は、特定秘密として特に保護される政府活動は国会が責任を持って行うべきであるので、監視機関はあった方が良い。それは、実質的に機能するものでなければならないはずだが、特定秘密のに関する監視活動を効果的に行うような仕組みになっているとは言い難い。
会派の議席数に応じて割り当てられる委員数
情報監視審査会は公明党の強い主張もあって常設のものとなった。ただ、常設であることと、日常的に開催されるか否かは別のものだ。
衆参両院に設置されている様々な委員会には、国会会期中の定例開催曜日がおよそ決まっているものから、常任委員会であっても不定期にしか開催されないものもある。例えば、衆議院には常任委員会として国家基本政策委員会があるが、今通常国会は開催実績がなく、先の臨時国会でも1回議事録が確認できるだけだ。委員会を開催するか否かは、法案審議などの決められた案件がある以外は、必要に応じて開催が決まる。委員会を立てるか否かそのものが、政治的な駆け引きの対象ともなっている。
情報監視審査会は、年に1回政府から運用状況の報告を受けることになるので、年に1回は確実に会議が行われる。しかし、審査会がどの程度積極的に活動をするのかは、多数を占める与党次第となるだろう。
また、特定秘密は「行政機関の長」に指定権限がある。警察庁や公安調査庁など一部の機関は国会議員以外が長を務めているが、それ以外はおよそ議員が「大臣」だ。特定秘密の指定や解除に問題があるということは、審査会の多数を占める与党議員からすると、仲間である大臣の決定に問題があることと同義なのだ。
与党が多数を占める審査会が、実質的な監視機能を発揮できるのだろうか。せめて、少しでも機能させることを考慮すれば、審査会は与野党半々の構成にするくらいは必要だろう。
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