気になるニュースを見つけた。
性行為をライブ配信、3000万円売り上げた「帽子君」現行犯逮捕 (産経新聞)
「公然わいせつ罪」とやらでつかまったらしいが…僕のように法律に詳しくない人にはとても疑問の多い罪名だ。
記事によれば、セックスすることも配信することも女性に同意を得て、18禁のサイトで配信してゾーニングもしてある。それで性行為を配信するのはどうして犯罪なんだ?誰か被害者がいるわけでもなく、記事を読んだ限りでは
「アダルトビデオの方や動画共有サイトに出回ってるモノのほうがずっと酷いものがあるよね?」
と感じてしまう。
そして、「3000万売り上げた」という見出しから罪があるとすると「売春」ではないか?と考えてしまうが、「公然わいせつ罪」という罪で売春ではないのはないらしい。
そして、この「公然わいせつ罪」という罪がそもそもどういう罪なんだ?
そのあたりのことが気になって調べた。
- 「被害者なき犯罪」という概念を理解すべし
公然わいせつ罪という犯罪を読んでいて僕が理解に苦しんだのが公然わいせつ罪の説明書きにある「被害者なき犯罪」という考え方。
今回の事件にも言えることだが、公然わいせつ罪は「不当に危害を加えられた」「誰かが損をした」という目に見える被害者がいる犯罪じゃない。
そのため、公然わいせつ罪で捕まったり、罪名を挙げて注意された時に「どういう基準の罪で、何をしていたら捕まるのかがわからない」という意見が挙がる。
もっと酷いと「こんなささいなことで捕まってしまった!警察の横暴だ!」という声も挙がるほど運用に問題がある犯罪らしい。
被害者がいないのにどうして取り締まるんだろう?
この疑問を解決するために、調べを進めて行くと「公然わいせつ罪」の説明にある「社会的法益」という言葉が重要であることがわかった。
特に「法益」が聞きなれない。…少なくとも僕は生まれてはじめて聞いた。
「法益」と言うのは法律があることで法律で守ったり、実現できる成果のこと。
例えば、「個人的法益に対する犯罪」と呼ばれるものには殺人や傷害など「個人の○○(生命、財産、自由などの権利が入る)」を犯した犯罪が入る。
法律という前提、逮捕したり事件として警察に対応してもらえる約束事があるおかげで、危険な思い・不信感を募らせずに済む事が生きているととても多い。
その「危険」の数だけ「罪」があり、その「危険」をざっくりとまとめたものが「○○的法益に対する罪」となる。被害者が明確な犯罪の場合は「個人的法益に対する罪」「国家的法益に対する罪」等があるが…被害者がわかりにくい(間接的にはいっぱいいるけど、誰かが直接損したわけではないもの)は「社会的法益に対する罪」に分類される事が多い。
- 「乱交」は公然わいせつ罪!
公然わいせつ罪の面白いところは「公然なのに、室内でも捕まる」というところだ。公然というのは「不特定多数」という意味で、そこが室内だろうが室外だろうが、大勢の人がその人の恥部なり裸体なりが見えるような環境にあり、それを警官が見つけたら捕まる。(公然わいせつ罪は基本現行犯なので、絵柄としてはセックスしているところに警察官が乗り込む不思議な絵になる)
調べていて驚いたのが「室内から露出したものが見えたから捕まった」だけではなく、新聞などで報じられるいわゆる「乱交パーティー」が公然わいせつ罪に当てはまるということ。
いや、乱交自体は罪にならないそうなのだが…パーティーとして人を募集したり、お金のやりとりなどをしてしまうと罪として捕まってスポーツ誌や警官24時で一夜にして有名人になる。
実際に、捕まった経緯を読んでいくと「ネット上の掲示板に告知を見つけて通報した人がいたこと」が逮捕のきっかけのモノがあるらしい。
これはネット上にエッチを配信した今回の人も同じでブログやツイッターで自分が配信する日を告知していたから現行犯で捕まえることができたそうだ。
現実的に「捕まってしまうきっかけ」未成年でも見られる環境であったり、通報する人がいることが大きな理由だそうだ。(実際に、帽子くんと呼ばれる今回の犯人も荒稼ぎしていたことから通報されるような恨みを買っていた…という話もある)
法律的には「なぜ被害者もいないのに犯罪なのか」というと…性的感情に任せてHなり、露出なりをした人を取り締まれないことの方がむしろ問題なんだ!
もっと具体的には「わいせつなことをしている人が取り締まれなくて、街中に裸の人・野外で開放的に営んでる人達が溢れかえって」も何も言えないことが問題だ!
性風俗が乱れることに対して「むしろ開放的でいいじゃないか」という人もいそうだけど、現実的にはそうも行かない。
誰かれ構わず、肉体関係が結べるような性風俗になっていると今度は性病などの健康問題にもなったり、結果論的に重婚や父親がわからない子どもが生まれたり…というもっと悲惨な話にもなりかねない。
そういった特定の誰かではなく、一夫一妻制やそれに見合った性風俗を維持するために「わいせつの罪/重婚の罪」を取り締まることは社会的法益(法律を守ることで個人でも国家でもなく、社会の利益に繋がる)という考え方をされている。
もちろん、通報する人がいるから警察が動く。だからこそ、犯人に対して「吊るしあげられた」という印象を持つのは正しい。まっとうな感覚だと思う。
ただ、未成年でも見られるような場所で告知をして、アダルトビデオのようにモザイクや断り書きを出して「これは作り物だ」「これはショーだ!」とするわけでもなかった事が捕まった大きな原因といえる。
産経新聞でも朝日新聞でも取り上げられているニュースだが、単に面白がるだけじゃなくて、そういうところに文字数を使って欲しい。
別に僕はウィキ・ネット辞書や報道を分析した一部の記事を読めば書けたのだから…そんなに難しい話でもない。
ただ、概念が普段馴染みのないものだから、法律用語やその考え方を順番に紐解いていけない煩わしさがあり…そういう部分をもっと考察して欲しいと思ったので、大学でほとんど法律系の単位をとってない僕がこんな記事を作ってみました。
![]() 名作映画から学ぶ裁判員制度 [ 坂和章平 ] |
裁判員制度は何が大変かというと「死刑の重み」うんぬんよりも法律が全然わからない人に法律の考え方・視点を説明する法曹界の人達が一番大変だと思う。
現場は混乱しないのかな?と法律系の記事を作る度に思う。