福島第1放射性廃棄物処分候補地 国説明に住民ら反発
◎富岡の管理型最終処分場/「風評に延々と苦しむ」
福島第1原発事故で出た1キログラム当たり10万ベクレル以下の放射性廃棄物を埋め立てる管理型最終処分場設置計画で、環境省は8日、候補地の福島県富岡町民を対象とした初の説明会をいわき、郡山両市で開いた。施設の安全性を訴える同省に対し、住民側は「戻ろうとする場所になぜ計画するのか」「風評被害は必至だ」などと猛反発した。
いわき市で70人、郡山市で180人が参加した。候補地は町南部の比較的線量が低い「避難指示解除準備区域」。将来帰還できる可能性があり、選定の経緯や計画の合理性に質問が集中した。
同省は追加被ばく線量の数値などを示し安全性を強調。「福島の復興に必要な施設で、国が責任を持って進める」と理解を求めた。
郡山会場では、富岡町で農畜産業を営んでいた坂本勝利さん(76)が「安心安全以前の問題だ。処分場ができれば、農業は延々と風評被害に苦しむことになる」と国の担当者に詰め寄った。
坂本さんは田村市に避難中だが、町に戻りたいと考えている。ことしから町内でコメの実証栽培が始まり、町の将来を考えれば施設を造るべきでないとの立場だ。
元町議会議長で無職猪狩利衛さん(78)は「処理を速く進めるにはやむを得ないと考えることもあるが、住民が帰還しようとする地域だ。監視態勢など安全面での不安解消が万全でない」と安全対策への不満を訴えた。
いわき会場でも、風評被害や安全性を懸念する声が上がった。
会社員若松英寿さん(51)は「候補地周辺は避難指示が解除になれば一番先に住民が戻って来られる場所。風評被害があった場合、売れない物を国が全部買い取るのか」と訴えた。会場からは「安全なのであれば、県内各地の既存の最終処分場でそれぞれ処分できないのか」という声も上がった。
◎田村・都路の焼却施設/「戻りたい人いるのに」
福島第1原発事故で汚染された福島県内の農林業系廃棄物などを減容化(焼却)する計画で、環境省は7、8の両日、候補地の田村市都路地区の住民に対する説明会を開き、事業の可否を検証する事前調査に理解を求めた。住民は風評被害などを懸念し、反対姿勢を強めた。
地区2カ所であり、計40人が参加。地区の原発20キロ圏内は4月に避難指示が解除されたばかりで、住民から「避難指示が解除されて戻りたいと思っている人がいる地域に、なぜ造ろうとするのか」「コメを作っても売れなくなる」など批判の声が上がった。
候補地は都路地区と川内村をまたぐ東京電力の敷地約6ヘクタール。仮設焼却炉を設置し、県中、県南、会津地方などで出た農林業系廃棄物と、田村市と川内村(原発20キロ圏外)の除染廃棄物を燃やす計画。焼却灰は同県富岡町に計画中の管理型最終処分場などに埋め立てる。事前調査では水質や土壌、施設規模、焼却灰の搬出ルートも検討する。
◎中間貯蔵施設/「是非判断に入らず」
福島第1原発事故で発生した除染廃棄物などを保管する中間貯蔵施設をめぐり、候補地である福島県双葉町の伊沢史朗町長と大熊町の渡辺利綱町長は9日、環境省が5月末から開いている住民説明会の内容が不十分だとして、現状では受け入れの是非の判断に入らないとの考えを表明した。いわき市での説明会後、報道各社の取材に答えた。
伊沢町長は「国は住民の質問に納得できる回答をせず、説明責任を果たしていない」と指摘。「国に不信感を持っている。残りの説明会でも同じような回答が続くならば、両町も県も判断に進めない」と述べた。渡辺町長は「国はもっと具体的に踏み込んだ説明をすべきだ」と話した。
今後について、伊沢町長は「説明会で出た住民の意見や質問をまとめ、国に回答を求める。回答後、次の対応を協議する」との考えを示した。
2014年06月10日火曜日