抵抗できない子どもを食い物にする性的虐待を、根絶するはずみにしたい。

 子どもを被写体にしたポルノを所持するだけでも犯罪となる。児童ポルノ禁止法が、そう改正される見通しになった。

 この法ができたのは15年前だが、これまで処罰の対象は、子どものポルノの製造や販売などだった。自分で見る目的で所持することも違法とするかどうかは、先送りされていた。

 児童ポルノは見過ごしてはならない犯罪である。社会が許容する余地をなくすためにも、今回の改正は支持できる。

 日本はかねて、世界に出回る児童ポルノの主生産地として国際的に批判されてきた。

 99年に法が施行された後も、被害はやまないどころか増えている。警察庁によると、昨年までの10年で製造・流通などでの送致件数は約8倍、特定された被害者数は約9倍になった。

 もはや、作り手や売り手だけでなく、買い手も処罰することで、需要そのものを断ち切るしかない。日本を除く主要7カ国(G7)は、すでに所持を犯罪としている。

 仮に子どもに性的な関心があっても、心の内にとどまる限り法が入り込む余地はない。

 しかし、児童ポルノの製造過程には、子どもへの強姦(ごうかん)、強制わいせつなど性的虐待があり、児童ポルノはその記録だ。

 虐待された被害に加え、だれかが所有すれば、被害者の屈辱は半永久的に続いてしまう。

 悩ましいのは、児童ポルノの定義にあいまいさが残ることだ。とくに「性欲を興奮・刺激するもの」という規定は今後の論点の一つとなろう。

 ふつうの人が性的興奮を感じなくても、性犯罪があったことを疑わせる写真や画像もある。小児性愛が背景にある犯罪を防ぐには、性欲を指標とするより性的虐待の記録となるものこそ規制すべきだとの指摘もある。

 法がどこまで実効的にはたらくか。規制の範囲が適切かどうか。捜査当局は運用のなかで不断に検証していくべきだ。

 国会の議論では、児童ポルノと重なる漫画・アニメ・CGなども規制すべきか調査研究をする付則を入れることも検討されていた。表現の規制につながる問題であり、最終的に見送られたのは妥当だ。

 まずは被害者をなくす観点から取り組むべきだろう。

 親や近親者から被害を受けるケースもある。警察や児童相談所などが連携して子どもを守るとともに、被害にあった子を長期的に見守る態勢も必要だ。