2014-06-09
■ 「風邪ですか?」が1日10回、年365日、50年尋ねられ続ける件
推測はできる。でも、心中お察しできない。どのくらい苦痛なのかは当事者でなければ、やはりわからないだろう。
尋ねる方にしてみれば、単なるコミュニケーションのきっかけだったり、素朴な疑問だったり、ただただ間を埋めるためのものだったりする。実際のところほぼ意味はない。でも、尋ねられる方は違う。だんだんと答えるのが億劫になり、「何度同じことを言わせるんだ」という感覚を超え、徐々に反射的動作になっていく。反射的動作になっていく過程で、心の動きの何かしらの部分がマヒしていく。場合によっては、その受け答えから不愉快な事態に発展した経験があれば、答えること自体に忌避感を募らせていく。
職業として尋ねられる立場にいる場合、尋ねる人にとっては「最初(そして、ほとんどの場合は最後の)一回」であるということを認識し続けることがとても重要になってくる。役所や銀行などの窓口でひどい目にあったという一般人の良くある体験は、尋ねられる人にとっては何千回目の質問、尋ねる人にとっては初めての質問という食い違いから発生している。
そして、自分の意思ではどうにもできない or 変えづらいことが原因で「尋ねられる側」になってしまった人にとっては、この問題はとてもとても大変なことだ。典型的には、珍しい名前や目立つ容姿(良い意味で・悪い意味で)を持つ方、そして、障碍のある方。職業のように己の意思で選んだり、「尋ねられること」によって対価を得られるわけでもなく、「尋ねられる側」に立たされているというのは不遇なことであると思う。そして、職業のように「尋ねられる側」から己の意思で降りることができない。
じゃあ、そういう強制的に「尋ねられる側」に立たされている人が不遇なので、尋ねることを止めさせることでそれを救おうというのは実際的に難しい。「尋ねられたたくないこと」は人によって違う、そして、ある人は多くの人に出会う。いくら学習しても「尋ねてはいけないリスト」を完全にすることはできない。それは、強制的に「尋ねられる側」に立たされている人であっても無理だ(もちろん「尋ねられる側」になったことない人よりは推測できるだろうけど)。
「尋ねられる側」の対処方法としては自己紹介のネタに昇華するというは有用な方法だと思う。尋ねられてうんざりしていること自体をネタとして扱うことで、一段メタな視点でとらえて、尋ねられること/答えることのダメージを軽減するという方法。ただし、ネタにしているからといって、痛くないわけでもないし、うんざり感じないわけでもない。素で尋ねられることや、ネタにしないときに比べて、ダメージが少ない(受け入れられる)というだけ。
「今、そうであること」は事実であり、ある人が「今、そうであること」が自分にとって「めずらしいこと」であるならば、そこの差を埋めたくなるのは、本能の一種であると思う。ビールバーで、手練の技で生ビールを注ぐマスターに「うまいですね。そんなにきめ細かい泡をどうやって作っているんですか?」と尋ねるのと、視覚障害の方に「駅前とか人よけるのは大変じゃないですか?」と尋ねることにどういう違いがあるのか。ビールバーのマスターは職業で愛想よく答えるのが仕事。視覚障害の人にはそんな質問に答える義理はない。確かに違う。でも、仕事じゃない限り答えが返ってこないのだとすれば、仕事じゃないことについて誰も尋ねることはしなくなる。それが素敵な社会なのかと考えると…。
ここまで書いてきたけど、特に答えらしきものが見つからない。
そして、さらに大変なこととして、マイノリティほど「尋ねられる側」に強制的に立たされやすい。尋ねられることによるダメージも受けやすい。だから、他のマジョリティの人たちと同じように「尋ねられない」という当たり前が欲しい。でも、「尋ねられる側」に立たされる原因の一つが「知られていないこと」にあるので、マジョリティに知ってもらうためには尋ねられ、かつ、それに答えなければいけないというジレンマがある。
ある人が個人的な資質や状況・時代的要請により窓口として尋ねられ、かつ、答えるという英雄的な行為を続けているとき、マイノリティにおいて「尋ねられない」という当たり前が欲しいと強く願っている人は、その英雄的行為をしている人を嫌悪することがある。なぜならば、英雄的な行為をしている人の答えはマイノリティを代表しているわけでなく(少なくとも「私」にはあてはまらない)、また、「尋ねられないという当たり前」をその英雄的な行為をしている人が崩しているように見えるから。とまれ。
まあ、個人的にできることは相手が私の尋ねたことを不快であると伝えてきたら「悪気はなかったのに」と反論せず、「ごめんなさい」と謝ることかな。
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