(2014年6月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
サッカー競技場の内と外でのブラジルのパフォーマンスはなんて違うのか。ブラジルのサッカー選手は素晴らしいスキルとジョーゴ・ボニート(美しいサッカー)で名高い。だが、2007年に当時大統領だったルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ氏が今年のワールドカップ(W杯)の開催権を勝ち取った時、彼は単にボールをゴールに向けて蹴る動作の政治版をやっただけだった。
ひどい道路とお粗末なインフラで知られる国が、しっかり目的を持って、乱暴に蹴り上げられたこのボールを追うのを期待することは、当時は妥当に思えたのかもしれない。あの頃は、新興大国のクラブであるBRICsが大流行し、ブラジルは一見して失敗しようがなかった。
だが、BRICsのブランドはその後、色あせてしまい、国際サッカー連盟(FIFA)のゼップ・ブラッター会長は、ブラジルのW杯の準備はこれまで見た中で最悪だとさえ言い放った。これはブラジルがかつて思い描いた前途有望なストーリーではない。
サッカー場の内外で繰り広げられるドラマ
それでも、たとえぎりぎりの土壇場であれ、12のスタジアムは恐らく準備が間に合うだろう。また、ジルマ・ルセフ現大統領が述べたように、非中国的な準備の遅れは、ブラジルが自由なメディアと意見を異にする権利を持つ民主主義国であることのコストの一部だ。ブラジルの軍事独裁と戦ったルセフ大統領はそのキャリアを通して、こうした市民的権利を勝ち取るために戦ってきた。
ブラジルにどんな欠点があろうとも、これらの資質は、天安門事件25周年のわずか1週間後に開催される大会で祝う価値がある。
サンパウロでブラジルがクロアチアと対戦する6月12日に大会は開幕する。こうして、スポーツのショーでもあり、また、全開したナショナリズムの世界一平和的なデモンストレーションでもあるトーナメントが始まる。実際、W杯の最も魅力的な特徴の1つは、たとえ通常は欧州か中南米の国であろうとも、小国がよく活躍することだ(他国の人には申し訳ないが、ランキング上位10チームすべてが両大陸から出ている)。
これらの国は伝統的に異なるプレースタイルをとる。欧州の効率vs中南米の才能だ。しかし、欧州のサッカーリーグに所属する中南米出身の選手が新しいプレー手法を学び、母国に持ち帰るようになると、その違いは曖昧になった。
ブラジルチームは、優勝候補ではあるが、硬直的だと批判されている。このような均質化はグローバル化の代償、あるいは恩恵かもしれない。だが、これは大会がドラマを欠くことを意味しない。