千代田図書館蔵古書目録の中の英訳『源氏物語』(1)
千代田区立千代田図書館が所蔵する「古書販売目録コレクション」の調査は、遅々として進まず、という状況です。進まないのは、悔しいかな、とにかくおもしろいからです。
ここには、明治から昭和にかけて発行された古書販売目録が、約1万点もあります。
本ブログでは、内務省の検閲本や反町茂雄氏のなどの千代田図書館蔵の資料について、簡単に報告しました。
「昭和7年に東大で開催された源氏展冊子は検閲されていた」(2011年6月 3日)
「池田亀鑑が反町茂雄を通して購入依頼した写本群のメモ」(2011年6月 4日)
それ以上に、「古書販売目録コレクション」は、ついジックリと見入ってしまいます。
目録の内容は、味も素っ気もない販売古書のリストです。しかし、こんな本が、というものが目白押しに並んでいるので、ついいろいろなことを考えてしまいます。
この調査は、今年の6月3日からスタートし、今日で5回目です。そして、やっとのことで1箱目に入っていた50冊を見終えることができました。
この調子では、すべてを見終えるのにあと30年以上かかります。これは大変なことになりました。
『源氏物語』にポイントを絞り、とにかくひたすら前を見て進むしかありません。
興味のある方は、ぜひ手伝って下さい。
さて、今日は明治時代に刊行された、末松謙澄の英訳『源氏物語』の記事が気になりました。
1箱目までの報告ですが、以下のものが見つかりました。
(1)ASAKURA古書もくろく、No.5、朝倉書店(神戸)、昭和3年10月、源氏物語、日本文庫、末松氏、洋一、6.50円
(2)ASAKURA古書もくろく、No.6、朝倉書店(神戸)、昭和4年5月、紫式部日記 和泉式部日記 更級日記 英訳、土井幸知、大森安仁子、洋一、7.00円
(3)愛書家、第2号、朝倉書店(神戸)、昭和5年2月、英文源氏夢ものがたり、明治38、アーネストサトウ、仮一、4.00円
(4)愛書家、第2号、朝倉書店(神戸)、昭和5年2月、英文 源氏物語、明治27、富田源太郎、洋一、8.00、(伊藤注・末松謙澄英訳初版は1882年、明治15年)
(5)ASAKURA古書もくろく、No.8、朝倉書店(神戸)、昭和5年10月、英訳 源氏物語、末松謙澄、洋一、7.50円
(6)愛書家、第7号、朝倉書店(神戸)、昭和6年3月、英文 源氏物語、1881年、末松謙澄、洋一、8.00円
この内、(2)と(3)については、今のところ何も情報がありません。ご教示をお願いします。気をつけて見ていきますが。
(1)は、本ブログ「奥付が切り取られていた末松謙澄訳『源氏物語』」(2011年6月19日)で書いた本に関連するものです。
(4)は、明治27年に刊行された、末松謙澄訳の『源氏物語』です。この情報は持っていました。しかし、それが「富田源太郎」という名前と関係することは知りませんでした。この「富田源太郎」という人物については、今後調べます。
(5)は(1)と同じ本ではないでしょうか。
(6)の本は、1881年の刊行となっています。これは、上記「奥付が切り取られていた末松謙澄訳『源氏物語』」と関連するものです。1881年に末松謙澄の英訳『源氏物語』が刊行されたということについては、実際には現物がまだ確認されていないので、今のところは現在確認できている1882年版が初版の刊行だと思っています。この目録の記述が確かであれば、これまたおもしろいことになります。
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