■「ブランド」「背伸び」とは無縁
「10年前と違うのは3回来店してもまだ悩む。勢いで買うことはなく大変慎重」。オンワード樫山がSCで展開する20代向け「フェルゥ」の長島貴子マーチャンダイザーもこう証言する。化粧品も同様で「口コミを見るか、試供品を取り寄せるのが前提。必ず確かめてから購入する」(コーセーの外尾秀人執行役員)。納得するまでお試しを繰り返す行動は「主婦並み」(大手日用品メーカー幹部)だ。
となると、都合がいいのは、1カ所で何店も見て回れる環境。店舗数は多ければ多いほどいい。レイクタウンには20代に人気の「ローリーズファーム」「ネ・ネット」「ANAP」などアパレルだけで約200店が集まる。その数は渋谷109のほぼ2倍にもなる。
「渋谷系ファッションは一通りそろえた」とイオンモールの福家敏記・営業統括部長は自信を見せる。同社はかねて、10年後に核顧客となる大学生ら20代の取り込みを狙ってきた。今やその作戦は首都圏のみならず全国で実を結んでいる。
日本女子大学4年の河合英里奈さんの持ち物
「バッグは最近買って気に入っている『フルラ』。なんだかんだ荷物が多くなるので、A4サイズはマスト。通学中にスマホでゲームしたり、インスタ見たり、家計簿付けたりするので、充電器は欠かせません。ないと1日乗り切れない。今友達との間ではやっているのは、フィッツコーポレーションのボディースプレー。香水ほど強くなくてちょうどいい。私はせっけんの香り」
3月に開業したイオンモール和歌山(和歌山市)では、ファッション関連の全57店のうち「H&M」や「OLD NAVY」など40店以上が県内または近畿地区初出店。開業1カ月の来店者は「10~20代が30代を上回った」(福家部長)。
イオンモール天童(山形県天童市)は県内女子大生の買い物スポットに浮上。これまでは洋服を買う時、バスで1時間かけて仙台駅前の「仙台パルコ」などに通っていたという山形市内の女子大生は「ファストファッションも買えるし、仙台に行く回数が減った」。
日経MJがマクロミルを通じて全国の女子大生300人を対象に実施した調査からもこうした実態が見て取れる。「洋服を購入している場所」は「イオンモールなどのショッピングセンター」が63%にのぼり、最大の「ユニクロ」(64%)と肩を並べた。「百貨店」は2割弱、「高級ブランド店」は2%にも満たない。「高級ブランドを買う女子大生は年々減少し、売り上げシェアは90年代の半分以下」(大手百貨店)
デフレの「失われた10年」とは対極のバブル期、女子大生は背伸び消費で自己顕示欲を満たした。価格を問わずブランドロゴや、テイストが価値そのものだった。
だが、デフレ時代に育ったイオン女子大生は「ブランド」「背伸び」とは無縁に近い。ショップへの執着すら薄い。
「よく行くお店? 駅ビルが多いんですけど、名前は覚えていません」(東京女子大学4年の入江妃秋さん)
日経MJの調査では「洋服を購入する際に重視する点」のトップは「価格」の84%。「コストパフォーマンス」(56%)「品質」(52%)と続く。月額のファッション代は「3千~5千円」(31%)がもっとも多い。限られたお金の中で「トレンド」(42%)も少しは意識する。ただし、重視するのは友達のファッションとの調和だ。SCにはカフェが多く「何を買うか、友達と相談もできる」格好の場だ。
ごく自然にシビアな比較購買をする彼女たちは、店やメーカーにとって「得意客」にしづらい存在だ。バブル期の女子大生の「その後」を見てもわかる通り、この年ごろで身についた消費行動は、年を重ねてもそう変わらない。
このまま景気が回復したとしても、マスの集団を一網打尽という販売成果を期待するのは難しそうだ。
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