『Kinectは「同梱」でも「抱き合わせ」でもなく統合されたシステムの一部』と説明してきた Xbox One では Kinect レス廉価版が『Xbox One』として販売される一方、マイクロソフトは開発者向けに Kinect for Windows v2 センサの先行予約受付を開始しました。
Kinect for Windows は、PCにUSB接続する汎用の NUI (Natural User Interface)センサ製品。マイクロソフトは開発者向けに Microsoft Store で数量限定の先行予約販売を実施するとともに、7月からKinect for Windows SDK 2.0 のパブリックベータを実施します。
価格は199ドル / 199ユーロ / 159英ポンド / 約2万円。Xbox One 本体の発売時よりも多い23の地域ですでに予約受付を開始しています。日本も含まれるものの、執筆時点でなぜか唯一「Coming Soon」表記。先行予約分が完売したあとは、遅れて年内に一般向け通常販売される見込みです。
(鋭いパンチを決める日本マイクロソフト執行役員 最高技術責任者(CTO) の加治佐俊一 氏。国内向けのマイクロソフト・リサーチ説明会より)
Kinect v2 は、1080pのRGBカメラ(通常カメラ)と赤外線奥行きセンサ、音源の方位や距離をとれるマルチマイクアレイをセットにした複合センサ。初代 Kinect に対して60%広角になり分解能が向上、奥行きは高精度なToF法に変更、RGBカメラはVGAから1080pに、新設のアクティブIRライトで暗所での認識を改善など全般に進歩しています。
ソフトウェア的には骨格レベルでの認識を同時6人(初代は2人まで)、骨格認識の精度を向上(関節数が増加、位置だけでなく向きも認識)、人体物理モデルを使って重心や筋肉への負荷認識、さらにはカメラと赤外線を使って脈拍認識など大きく進化しました。
マイクロソフトでは自社のXbox Oneに同梱販売してエンターテインメントや新しいユーザーインターフェースとしての提案を試みるとともに、産業向けや店舗などでの業務用、実用向けとして Kinect を含むNUIを全社的に推してきました。導入例は賢い監視カメラ、在庫管理、ロボットやドローンの眼と耳、顧客の骨格認識とCG合成を組み合わせてバーチャル試着、手術現場で手を触れずに資料参照などなど。
歴代Xbox がゲーム機としてはアレでXbox One も10か月遅れの二の次市場扱いだった国内でも、マイクロソフト日本は Kinect for Windows には力を入れています。コンシューマ向けと違って広告せず一般消費者の眼には触れないため、日本での実証実験や採用例が世界的に見ても非常に多いことはあまり知られていません。
Kinect for Windows は、センサを買えば開発環境やソフトウェア、使用ライセンスは無料。特にマイクロソフトと個別契約せず導入できます。また先日には、Kinectを使うPC用アプリをWindows Store で自由に販売できる施策も発表されました。
マイクロソフト的には、Xbox One にぶら下げて一気に離陸させる皮算用は逆にプラットフォームごと沈めかねないため切り離したものの、マウスやタッチに変わる将来のナチュラルユーザーインターフェースへの布石として、ゲームに限定しない開発者対応には変わらず力を入れています。
なおKinect 必須キラータイトル不在のまま切り離しが実施された Xbox One では、以前から予告されていた「Kinect分予約リソースを開放してGPU処理能力ブースト」も6月の開発者キット更新から導入済み。最大で10%向上してもあまり変化があるような気はしませんが、使わないときでも予約されていたリソースの開放と最適化はありがたい話です。