訪日外国人が国内で使う金額から、日本人が海外で支払う金額を差し引いた「旅行収支」が4月、約44年ぶりに黒字に転じた。年1000万人ペースで外国人が日本を訪れるようになり、人口減で縮む内需を補う効果が国際収支にも表れ始めた形だ。モノやサービスなど海外との取引状況を表す経常収支も3カ月連続の黒字となった。
財務省が9日発表した4月の国際収支速報によると、旅行収支は177億円の黒字となった。大阪で日本万国博覧会が開かれ訪日客が増えた1970年7月以来の黒字だ。13年4月は224億円の赤字だった。
4月の訪日観光客は123万1500人と前年同月比で33.4%多い。タイやベトナムは単月ベースで過去最高だった。円安で日本観光が割安になったうえ、東南アジア諸国を対象にビザ(査証)の要件を緩和したりした効果が強まっている。
観光庁は、訪日外国人の消費額が今年1~3月に4298億円と前年同期に比べ48.5%増え過去最高になったと推計する。みずほ総合研究所によると、年1000万人の訪日客は名目国内総生産(GDP)を年1.8兆円押し上げる効果がある。
一方、4月の日本人出国者数は4.4%減った。旅行収支の改善につながった。円安で海外旅行が割高になったことが影響したようだ。旅行収支を含むサービス収支は4月に6597億円の赤字。日本企業が海外で研究開発費などを増やしているのが影響し、赤字額は1382億円増えた。
ただ、政府は訪日観光客を2000万人まで倍増させる計画でビザ要件の緩和の対象国を拡大する方針。「訪日客の増加に伴い旅行収支の黒字は拡大する公算で、サービス収支の赤字は縮小方向になる」(SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミスト)見通し。
4月の経常収支は1874億円の黒字となった。黒字は3カ月連続だ。ただ、黒字額は前年同月に比べると76.1%減り、4月単月としては比較できる1985年以降で最低だった。貿易収支は7804億円の赤字で722億円増えた。
輸入は6兆7600億円と6.6%多い。円安が進み円建ての輸入価格を押し上げた。原子力発電所の稼働停止が長引き液化天然ガス(LNG)の輸入は高水準が続いている。電子部品の輸入も多かった。
輸出は前年同月比で6.2%増え5兆9796億円だった。景気が持ち直しつつある欧州向けが増えている。ただ大幅な円安が進んだのに比べると輸出は緩やかな伸びにとどまっている。
旅行収支、訪日外国人、GDP、みずほ総合研究所