エル・システマの奇跡を綴った『世界でいちばん貧しくて美しいオーケストラ』
- June 9th, 2014
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以前から気になっていた「エル・システマ」の本を読了。ベネズエラで行われている、音楽を通じた社会教育システムですね。
小さいころからみんなで音楽を習うことにより、協調性、自立性など、社会で生きていくためのスキルが自然と(しかも楽しく!)身についていく、という素晴らしい仕組みになっています。国をあげてこのシステムをバックアップしているのがすごい。
また、エル・システマ出身の指揮者、グスターボ・ドゥダメルが世界で高い評価を得ていることでも有名ですね。
↑ エル・システマの概要。7分ほどの映像ですが必見。
ベネズエラではほっておくと子供たちがギャングに育ってしまう貧困層も多いのですが、このシステムのおかげでそうした犯罪もぐっと減少したようです。
うまいな、と思うのは「音楽を習い始めた瞬間、子どもたちは貧しくなくなる」という理念のもと、貧しい子もそうでない子も平等に扱われる点です。国の政策なので、希望者は誰でも入れます。費用もかからないし、無料の送迎バスもあります。さらにおやつまで出るのです。
だれもが平等に楽器を与えられるし、制服もまったく同じもの。そこにあるのは演奏技術の差だけです。そしてそうした差は練習で誰もが埋めることができるのです。
「音楽には貧しさによってもとらされた心の傷を直す力がある」
「実際に音楽家になる子は少ないでしょう。しかし彼らはコミュニティに属する『市民』になるのです」
「楽員には月給が支払われます。芸術の道に進むか、家計を助けるために働くか、の2択を迫られることがないのです」
「オーケストラで身につけた振舞いはどこにいっても通用します」
「子供の音楽クラスには著名な作曲家の名前がついています。特段、意味があるわけではありません。しかし彼らが大きくなって曲を演奏するときに、親しみを感じることができるでしょう」
考えれば考える程、うまく作られた仕組みだな、と思うのですが、もちろん実現までには相当な努力が必要でした。中心人物となったのがホセ・アントニオ・アブレウさん。「彼がいたからこそエル・システマが生まれた」と誰もが認める方で、TED受賞者でもあります。
↑ TED授賞式のスピーチ。17分ほどの映像です。
ちなみにエル・システマの教育メソッドは日本の「スズキ・メソード」が元になっているらしいですね。知らなかった。
国民の多くが楽器が引けて、オーケストラをきっちり演奏できる立ち居振る舞いを身につけているとしたら・・・と考えるとドキドキしますよね。日本の政策にもこういうのがあるといいなぁ・・・と思わないでもないです。
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