アルベロス
左図のような形をした図形は、アルベロスと呼
ばれる。靴屋のナイフを意味するギリシア語であ
るが、本当に靴屋さんで使っていたのだろうか?
アルキメデスがそう名付けたらしいので、アルキ
メデスの生きた時代(紀元前287年〜紀元前212年)に
は確かに使われていたのだろう?
(「見たんか〜!」と、どっかからつっこまれそう...)
アルベロスは、下図のように3つの半円で囲まれた図形である。
アルベロスの面積は容易に求められる。
上図から、 (π(r+s)2−πr2−πs2)/2=πrs である。
この値は、驚くべきことに、左図の垂線CDを直
径とする円の面積に等しい。
実際に、CD2=OD2−OC2=(r+s)2−(r−s)2
より、 CD2=4rs なので、求める円の面積は、
π(CD/2)2=πrs となり、一致する。
また、下図のように半円A、Bの共通接線の接点を結ぶ線分EFと線分CDを対角線にも
つ四角形CFDEを作ると、四角形CFDEは長方形になるという美しい性質がある。
証明は易しいだろう。
(証明) EF2=(r+s)2−(r−s)2=4rs=CD2 なので、CD=EF が成り立つ。
また、 ∠AEF=∠R より、 ∠AEC+∠GEC=∠R
∠ACD=∠R より、 ∠ACE+∠GCE=∠R
ここで、 △ACEは、 AC=AE の二等辺三角形なので、∠AEC=∠ACE
よって、 ∠GEC=∠GCE より、△GECは二等辺三角形
このとき、 EG=GC が成り立つ。
同様にして、 △GCFは二等辺三角形となり、 GC=GF が成り立つ。
よって、 EG=GC=GF で、 CD=EF より、 EG=GC=GF=GD となる。
このことは、四角形CFDEにおいて対角線が互いに他を2等分していることを示す。
したがって、 四角形CFDEは、平行四辺形である。
さらに、△CEFの内角の和は、180°なので、
∠GEC+∠ECF+∠GFC=180°
すなわち、 ∠GEC+∠GCE+∠GCF+∠GFC=180°
ここで、 ∠GEC=∠GCE 、 ∠GCF=∠GFC が成り立つので、
2∠GCE+2∠GCF=180° すなわち、 ∠GCE+∠GCF=90°
が成り立つ。 よって、 ∠ECF=∠R である。
以上から、 四角形CFDEは、長方形である。 (証終)
(コメント) 上記の性質は何れも、アルキメデスにより証明されているとのことである。アル
キメデスの偉大さを再認識しました!
また、アルベロスの内部に描く内接円についても面白い性質がある。これについては、次
のページで詳しく議論されている。
○ 曲率の真実 ・・・ 反転を利用した、内接円の半径の計算など
○ 基本の作図(円に接する円) ・・・ 定木・コンパスによる内接円の作図など
(参考文献:D.ウェルズ 著 宮崎興二 他 訳 不思議おもしろ幾何学事典 (朝倉書店))