5月下旬から6月初めにかけ、長野県諏訪地方を含む県内外でインターネットの接続障害が発生し、利用者からネット事業者に多数の問い合わせが寄せられたことが4日、分かった。一般家庭などの無線LANルーター(電波でパソコンとネットをつなぐ機器)が、特定の対象を狙う大規模なサイバー攻撃の「踏み台」として使われた可能性があるという。業界団体によると、無線ルーターが特定の設定になっていると踏み台にされる恐れがあるといい、利用者に設定の確認を呼び掛けている。
諏訪地方では5月31日から6月1日にかけ、インターネット接続サービスを手掛けるエルシーブイ(諏訪市)に「ネットにつながりにくい」といった問い合わせが数十件以上寄せられた。同社は1日、加入者宅の無線LAN用のルーターなどが攻撃に使われている可能性があるとし、ホームページなどで注意を促した。2日以降は目立った問い合わせはないという。
ネットの安全対策が専門の社団法人「JPCERTコーディネーションセンター」(東京)などによると、ルーターの初期設定によっては「オープンリゾルバ」と呼ばれる状態になり、知らぬ間に攻撃に使われて接続障害も起こす恐れがある。
同センターによると、同様の障害は5月29日ごろから6月2日ごろにかけ、全国の広い範囲で発生。NTTぷらら(東京)では5月29〜30日に、外部からとみられる大量の不正アクセスで利用者がネットに接続しにくくなった。同センターは「攻撃の目的や具体的な被害規模は今のところ不明」としている。
政府の内閣官房情報セキュリティセンターは「これまでも同様の事例はあったが、今回はより規模が大きいようだ」としている。ただ、県内でネット接続サービスを手掛ける県協同電算(長野市)やINC長野ケーブルテレビ(同)、テレビ松本ケーブルビジョン(松本市)などは「目立った障害はない」としている。
JPCERTコーディネーションセンターによると、ルーターの悪用を防ぐには設定を変更し、オープンリゾルバにならないようにする必要がある。設定の確認、変更の方法は機種によって異なり、「製造元に問い合わせるなどして必要な対策を取ってほしい」としている。