(2014年6月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
石油輸出国機構(OPEC)が6カ月前に前回総会を開いた時、オーストリアの首都ウィーン中心部にある本部ビル内外での議論はもっぱら、イラン、イラク、リビアの3カ国による原油増産に応じてOPECが減産しなければならないかもしれない話に終始した。
だが、OPEC加盟12カ国の石油相が6月11日の総会のためにウィーンに集まる準備を進めている今、別のテーマが浮上している。加盟国で数々の問題が生じていることから、焦点はもはや減産ではなく、OPEC産原油に対する「コール(需要)」に応じるために十分な原油を生産できるかどうか、だ。
ロンドンに本拠を構えるコンサルティング会社エナジー・アスペクツは「OPECにとっての課題は、産油量を制限するのではなく引き上げることだ」と指摘する。
増産が予想されていたリビア、イラク、イランだが・・・
昨年12月の総会以降、リビアでは、治安状況の悪化を受けて輸出が滞った。一方、イラクの石油生産はごくわずかしか増えず、イランはまだ制裁を巡る西側諸国との最終合意に至っていない。
同時に、OPEC産原油に対する需要は増加してきた。エネルギー予測の世界的権威である国際エネルギー機関(IEA)は最近、需要の強含みとロシアやカザフスタンなどの非OPEC諸国からの期待外れの供給を引き合いに出して2014年の対OPEC需要を上方修正し、市場を均衡させるためには、OPECは第3四半期の生産を大幅に増やさなければならないと述べた。
「OPECの日量40万バレル前後の増産は先月、市場を緩和させるのにある程度役立ったが、消費が回復する下半期の市場ニーズを満たすには不十分だ」。IEAは広く注目されている月次報告書でこう述べた。
アナリストらは、価格を抑制しておくためには、OPECは2014年7~12月期に現行水準より日量100万バレル多い日量3100万バレル前後の原油を生産する必要があると試算している。原油市場の国際指標であるブレント原油は過去2年ほど、平均して1バレル108ドル程度で推移しており、多くのOPEC加盟国が狙う110ドルという「マジック」レベルに近い。
だが、複数の加盟国で生じている計画外の供給停止のために、OPECがさらに産油量を増やすことは大変な難題になる。バークレイズによると、リビア、イラン、イラク、ナイジェリアで日量250万バレル前後のOPEC産原油の供給が止まっており、近い将来、元に戻る見込みがないという。
エナジー・アスペクツのアナリスト、アムリタ・セン氏によると、日量3100万バレルに多少なりとも近づくためには、OPEC最大の産油国で、大きな余剰生産能力を持つ唯一の国であるサウジアラビアが日量1100万バレル程度生産する必要がある。それは不可能ではないが、前代未聞であり、市場の余剰生産能力を1%まで減らすことになるという。
「今夏は(価格の)激しい上振れが待ち受けている可能性が十分にある」とセン氏は言う。