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2014.6.8 SUN
TEXT BY MAURIZIO DI LUCCHIO
IMAGES BY SOLAR IMPULSE
TRANSLATION BY TAKESHI OTOSHI
WIRED NEWS (ITALIA)
スイスの冒険家一族ピカール家のDNAには、おそらく特別な遺伝子が存在するのだろう。人類の限界に挑む偉業を思い描くよう駆り立てる、内的な力だ。祖父、オーギュスト・ピカールは、1930年代から50年代に、気球の最高高度記録と深海探検で世界的に知られることになった。その息子、ジャックは、1960年に深海観測船でマリアナ海溝の海底、海面下11,500mに到達した。
孫のベルトラン(現在56歳)は、パイロットであり、精神科医だ。1999年、歴史上初めて、気球による無着陸世界1周旅行を達成した。そして2001年以降は、さらに野心的なプロジェクトのために働いている。太陽光エネルギーのみで駆動する飛行機による、動力用燃料なしの世界1周旅行だ。
「人類は物理的に地球を征服しました。そして地球の至るところを探険しました。いま新しいフロンティアが何かというと、それは『地球を救うこと』です。そして、人生の価値を勝ち取ることです」。ピカールは、スイスのパイェルヌで行った「Solar Impulse-2」の発表で、伊版『WIRED』にこう語った。Solar Impulse-2は、2015年に偉業に挑戦する飛行機だ。
「飛行機が石油を1滴も使わずに5つの大陸を横断できるとわかれば、家でも自動車でも、あらゆるものをサステイナビリティ(持続可能性)の観点から見直すことができます。クリーン技術の実現性を証明できます。これは、古い習慣に挑戦することによって不可能なことを達成できるという、具体的な証拠なのです」
これはまさしく、「不可能なこと」だ。航空機の専門家たちは当初、このアイデアをそう定義していた。彼のヴィジョンをかたちにしようとするメーカーはなかった。しかし、ピカール家では「降参」は禁じられている。
まさにこのとき、ベルトランは同じくらい夢想家である冒険のパートナーを見つける。技師で操縦士のアンドレ・ボルシュベルク(62歳)だ。グーグルやオメガ、バイエルなど数十の企業を集めて、挑戦への資金援助と必要な技術の開発を求めた。そして彼は、ゼロ・エミッションの飛行機を生み出すチームを結成する(現在80人で構成される)。
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