しかし、この言葉に対応する事実はなかった。
外務省は59年に全ての在日の人々の調査をした結果を公表した。それによれば、徴用労働者として日本に渡ってきた人は終戦直後に帰国し、残留して日本に住み着いた人は245人に過ぎない。その全員が自分の自由意思で日本に残留したことが面接調査で確認されている。この外務省調査は当時、朝日新聞も報道した。
では、大部分の在日の人々はどうして日本にいるのか。彼らは戦前、よりよい働き口や生活の場を求めて、日本にやってきたのである。中には密航までしてきた者もいる。彼らは紛れもなく「来たくて来た」人々である。
「朝鮮人強制連行」は真っ赤な嘘である。猫に「イヌ」という名前をつけたのと同じで、人は強制連行という言葉があるから奴隷狩りが行われたというイメージをもたされる。しかし、その実態はどこにもなかったのだ。
■藤岡信勝(ふじおか・のぶかつ) 1943年、北海道生まれ。北海道大学大学院修了後、北海道教育大学助教授、東京大学教授、拓殖大学教授を歴任。現在、拓殖大学客員教授。95年、歴史教育の改革を目指して自由主義史観研究会を結成。97年、「新しい歴史教科書をつくる会」の創立に参加し、現在同会理事。著書・共著に『「自虐史観」の病理』(文春文庫)、『教科書が教えない歴史』(産経新聞ニュースサービス)など多数。