Nanpa is Suicide

A stupid man write this blog.

キャバ嬢の乱その1(2014年)

金曜日の夜。

ナンパしたキャバ嬢から連絡がきた。

「今から遊ぼう」と。

 

自分の家の最寄り駅まで来てほしいと言う。僕は新宿で会うことを提案したが、「あたし、新宿嫌い」と言われた。ここから、彼女と僕の戦争が始まった。

 

最寄り駅まで着いた。

彼女と出会う。金髪のプリン。年齢は33。「あたし、25歳くらいに見られるのよ」と本人は言ったが、明るいところでみると20代には決して見えない。顔は整っているが、お酒とタバコのせいか、肌は浅黒い。化粧はもちろん濃かった。

彼女はカラオケを提案してきたが、僕はお腹がすいていたし、じっくり話てみたいと思ったので、居酒屋で飲むことにした。

 

席に座るなり、いきなり自慢が始まった。

「見て!この時計!お客さんに買ってもらったの。シャネルよ、シャネル!」

彼女は自分の左手につけた、白いシャネルの時計を指さしながら、そう言った。僕が「すごいですね。よく似合ってますよ」と言うと、彼女は突然携帯を二台、テーブルにどんと置いた。そして、客に営業メールを打ち始めた。

「ごめんね。今病気で店休んでいるの。だけど、客からメールが来まくるんだよね。めっちゃうざい」

そう言うと、携帯でメールを必死に打ち始めた。ひっきりなしに、客にメールを打っていた。しばらく、僕は彼女をじっと見ながら、お酒を一人で飲んでいた。彼女は僕に見られていると気づいて、こう言った。

「今さ、一人めんどくさい客がいるんだよね。あたしが『今飲んでる』と送ったら、『誰と飲んでるの?』って返って来たの。それから、ずっとメールが来るんだよね。ちょっと待ってて、電話してくるから」

彼女は席を立ち、電話をしにトイレへ行った。

僕はまた一人でお酒を飲んだ。しばらくすると、彼女はイライラしながら、また帰ってきた。「タバコ買ってくるね」と言って、外へ出ていった。

僕は、せっかくここまで来てやったのに、なんだこいつはと思っていた。もしかしたら、これは彼女の作戦かもしれないと思った。いわゆるネグと言うものだ。つまり、ここで怒ったら負けなのである。自分が男女のコミュニケーションの戦いの中にいることを、はっきりと自覚した。そして、深呼吸をしながら、彼女の帰りを待った。

 

彼女は帰ってきた。そして、タバコをガンガン吸い始めた。

彼女の身の上話を聞いた。母親がうつ病で、その世話が大変なんだという。7年前に父親が他界し、弟はまだ学生なので、自分が稼いで家族を支えないといけないと言う。

「親が病気で…自分が稼がないといけないから…」というストーリーは、水商売ではよく使われる。それで金がないから助けてほしいと言って、客に金をせびる。本当かどうかはわからない。だが、もしそんなに大変な境遇なら、今ここでナンパ男とお酒を飲んでいる暇はないということだけは事実だ。そんな浅知恵で他人をコントロールできると思っているのだろうか。その浅はかさに怒りが沸いた。

また、彼女の食べ方は汚かった。サラダはくちゃくちゃ食べる。5本しかない焼き鳥は、勝手にほいほい自分が食べたい物をとっていく。彼女はしっかりした人間ではない。だが、こんな下品な女性にもシャネルの時計を買ってやる男がいる。僕はめまいがした。こいつに生きる価値はないのではないかとさえ思った。

 

僕はキャバ嬢の仕事について、彼女に質問した。

「僕はホスト始めたばかりで、よくわからないことが多いんです。さっきの電話してたお客さんは、どうやってあしらったんですか?」

すると、彼女はこう言った。

「『誰と飲んでいるの?』と聞かれたから、『なんで彼氏でもないのに、そんなこと

聞くの?彼氏になったら教えるね』と返した。こういう言葉の使い方は、大事だよ」

それから、彼女は水商売について、僕にいくつかアドバイスをしてくれた。

彼女は「あたしはキャバ嬢だから…」と何度も言っていた。彼女は、「あたしはキャバ嬢である」ということが、アイデンティティなのだろう。彼女から「キャバ嬢」を取れば、彼女はただの汚いアラサー女性である。誰にも相手にされないだろう。

しかし、何よりも不幸なことは、彼女が自分のそのような悲惨さに気づいていないかもしれないということである。そんな彼女を見ると、僕は悲しくなった。そんな彼女の相手をしている僕は、もっと悲惨であると思ったから。

 

僕らはしばらく話した後に、カラオケに行くことになった。

カラオケで、僕は彼女と激しい戦闘を繰り広げることになった。

 

その2に続きます。