強化試合のザンビア戦で後半30分に勝ち越しゴールを決める本田=タンパで(共同)
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PKをねじ込み、森重のクロスに身を投げ出してぶち込んだ。ちょうど2年ぶりの1試合2発。得意の左足がうなりを上げ、「いい方向に本番で行けると思います」と無表情のまま言った。1週間後に迫った初戦に向け、いよいよ本田が、ゆっくりと乗ってきた。
不調から抜け出せぬ責任感と、欠かせぬ絶対軸としてのプライド。複雑に交錯したまま、本田はピッチに立っていた。精彩を欠く日が続き、「初戦を100%で迎えるのは難しい」と弱音とも取れる言葉を吐露した。本大会直前になって、本田の調子を不安視する声も渦巻いてきた。
「それを言う人は、僕に求めている基準がすごく高い。そういう人には大会が終わって、また感謝したい。逆にこれで良しとしている人には、『本田圭佑はまだまだこれ以上、もっといいパフォーマンス出せるよ』と見せていきたい。どちらに対しても、いい意味でサプライズを起こせればいいと思う」
絶対にボールを奪われないから安定した結果を残してきた。ピンと立ち、肩越しから相手ににらみを利かせ、強い体を軸に球を保持してきた。その姿が、力強さを伴って徐々に戻りつつある。
後半12分、敵陣中央付近。本田は緩急、急角度のターンで背負った相手DFを置き去りにすると、ゴール前へ侵入した香川へ絶好パスを届けた。同19分、本田は後ろから当たられても倒れない。グッと踏ん張り、相手を左手で押さえながら、今度は大迫へラストパスを放った。最後の強化マッチで挙げた2得点が免罪符になるわけではないが、エースは確実な復調傾向にある。
「このW杯のためにやってきた部分が多いので、最高の準備をしたい。自分だけでは勝てないけど、自分の仕事に集中して結果を出したい」
戦いは続く。喜びはおくびにも出さない。ゴールを手土産に、本田が強者どもが集うブラジルへと向かう。 (松岡祐司)
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