1人で運転・消火・救助、財源不足で「消防署ひとり」

出動の所要時間はソウルが3分22秒、全羅南道は7分7秒、慶尚北道は9分8秒
1人で装備を整え、1人で運転し、1人で消火
ソウルの4分の1に当たる面積を1人で担当するケースも
「2人1組」の原則に違反、財政支援が必要

1人で運転・消火・救助、財源不足で「消防署ひとり」

 5月29日午後、江原道三陟にある三陟消防署蘆谷119地域隊で出動ベルがけたたましく鳴った。キム・ナムヒョン消防校(消防副士長に相当)=31=が状況室からかかってきた電話を取り、防火服を身に着けた。「火災出動、火災出動。住宅のガスコンロから火災発生。一人暮らしの高齢女性が建物の中に閉じ込められている」。消防車に乗り込み運転席に座ったキム消防校は、火災現場まで走りながら通報者と電話をした。現行法上、自動車のドライバーは車を停めて電話をしなければならないが、状況は急を要した。

 現場に着いたキム消防校は、消火ホースの一方の端を消防車のポンプにつなぎ、もう一方を火災現場前に持っていくと、再び車に戻ってポンプの圧力を高めた。誰もつかんでいないホースが、ぐっと水で膨らみ、左右に激しく動き回った。キム消防校が素早く駆け寄り、水をまき散らしながらくねっているホースの端をようやくつかまえた。消防官歴6年のキム消防校は「2人いれば30秒でできることが、自分1人だとその3倍かかる」と語った。

 キム消防校が放水を始めたのは、出動ベルが鳴ってから10分を少し過ぎたころだった。幸い人命被害はなかったが、火の手は大きくなり、住宅は全焼した。3-4人の消防官が出動していれば、そこまで大きな被害は出なかったはずの火事だった。早期に火の手を抑えて大火事になるのを防げる「ゴールデンタイム」は5分。火が出て5分が過ぎると、蓄積された熱のせいで火炎が爆発的に広がる「フラッシュオーバー」現象が発生する。

 蘆谷119地域隊は「1人消防署」だ。キム消防校を含む3人の消防官が配置されているが、12時間単位で交代勤務をしており、火災や事故などが起こっても消防官1人しか出動しない。状況報告、火災の鎮圧、消防車の操作を1人でしなければならないのだ。消防官1人で担当すべき三陟市蘆谷面一帯の面積は144平方キロで、これはソウル市の4分の1に当たる。

オム・ボウン記者
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