「原作レイプ」問題から考える「アニメ化」の二次創作性と影響力の大きさ

アニメーター首藤武夫「アニメ制作において石ころより役に立たないのが原作者という存在」→ツイッター炎上【原作レイプ・オリジナル・山本賢治・のぢたま某・漫画家・ラノベ作家】 : ツインテ少女

 

原作レイプ」という概念に関しては、もうずっと前から許されざるものだと考えています。

その一つが結局「アニメ化」なんてのは「コミカライズ」や「ノベライズ」と同じ類のものでしかない所もあると思う。

 

・アニメ化は「メディアミックス」かつ「二次創作」という説

現状の日本における「メディアミックス」が、概ね「企業でやる二次創作」という側面が強いと思う。

「コミカライズ」を雑誌でやってる二次創作としてしか認識していない人も多い。

そしてこの「アニメ化」も「コミカライズ」「ノベライズ」などと性質はほぼ同じ。

「二次創作」に限りなく近い種類でしかない。

 

(コミカライズ・ノベライズを否定している訳ではなく、ああいう作品での設定フォローなどもメディアミックスの魅力の一つだろう。二次創作では原作を丸写しする必要はあまりない)

 

ストーリー的には原作丸なぞりなのがアニメ化の基本ではあるが、二次創作の再構成モノなどにはそういったものもある。
ぶっちゃけキャラが動いて声優が声を当てていればそれだけでアドバンテージである。

更にアレンジを加えたアニメは、それそのものがただの「二次創作」としての色が強まる。

 

だから変なアレンジを付け加えすぎた場合、いわゆる「同人ゴロ二次創作」みたいなものになってしまうのだろう。

特にキャラ人格を挿げ替えたりするタイプのものはゴロと変わらない。そういったものに不快感を覚える人が居るのも当然だろう。

 

逆に手間をかければ「アニメ」が、同人の二次創作として成立してしまう側面もある。

例を挙げるなら「東方」「艦これ」なんかでも大手ではアニメーションが存在している。

あえて「企業の公式アニメ」が「同人アニメ」に勝ってるというのは、キャラクターに声をあてる声優を企業では使える事が多いだけだ。
(東方で「二次創作アニメ」が目立つのは、ZUN氏が大まかな声優を使う気が無いので自由に声を当てられるからでもありそう)

 

 

 

 

 

参考記事

マジョリティが二次創作や脳内補完に親しんでいる社会 - シロクマの屑籠

 

「二次創作」増加は、受け手の”変化”でなく「元からあった志向が、技術進歩で実現可能になった」んじゃないかな?(仮説) - 見えない道場本舗

 

そしてこの上で引き合いに出てくるのが「アニメ」という媒体の強さ。

 

・アニメは強すぎる

 

アニメという媒体の強みは、その製作にかかる予算と人件費に反比例した 受け手側の手軽さがある。

映像を見るまでの手間がほぼノーコストで、垂れ流しでも動いてさえいれば見れる。

近年では「ニコニコ動画」などでネットの無料配信を推し進められてる事も後押ししているのだろう。

これが漫画や小説だと「お金を払わなきゃいけない」感が強くなるし、無料で見るにしても電子書籍は読むまでコツが居る。

電子書籍は賛成だが、漫画などを読むときに拡大しなきゃ読みづらいのも否めない。

 

特にここ10年以上、主流になっている「1クール深夜アニメ」なんかはその上で限られた尺で放映を完遂する。

人気漫画がどんどん長期化していく傾向の中で、アニメは短縮傾路線を突き進んでいた。
4クール以上をやってくれるのはキッズアニメか、あるいは分割2クールものくらいだろう。

 

また3か月ごとに「クール入れ替え」が基本になので、漫画やノベルと違ってアニメはライバル作品とのスタートラインが一定に保たれる。

 

その結果、「原作は見てないけどアニメは見てる」という層が出てくる。

原作を読むには金がかかる事が多いが、アニメならちゃんと見て行けばほぼ無料で楽しめるからだ。

とにかくアニメという媒体はメディアミックスの中でも、もっとも手間がかかる割にもっとも手軽な媒体と言っても過言ではないので非常に強い。

だがアニメの原作レイプの問題点は、その「アニメの強さ」にもある。

 

・アニメ化の責任

アニメが強すぎるせいで、そのアニメに取り込まれたものを前提として語る層が少なからず出てくる。

アニメによる宣伝効果が大きいせいか、「アニメしか知らない人」にとっては他の漫画やノベル、ゲームなどどうでもいいのだ。

 

そして「自分が知らない媒体の事はどうでもいい」という人ほど声が大きい。

例えば(厳密には同時メディアミックスだが)「パトレイバー」の押井監督とゆうき先生の作風を比較しただけで「漫画はあたしが知らないからどうでもいいし、比較するなクズが」とか言い出す人も居るのだ。

オタクに限らず「知らないモノ」は恐怖の対象である事が多い。

アニメ化で切り捨てられた部分・改変された部分はこの「知らないモノ」として恐怖される。

それが結果的にメディアミックス全体の邪魔になって潰されるケースも少なくない。

 

それ以前に「ジャンルゴロ」の問題性というのは、人の作品を踏み台にしてその作風を咀嚼する事もなく自分のオリジナルの踏み台にする事である。

これはアニメにも言えるだろう。

その監督や脚本家の作風がいいのはわかったが、だったら踏み台なんかしないで「オリジナルでやれや」という話ですよ。

キャラの人格を大事にしなければ何やったって「踏み台二次創作」にしかならないし、大本のキャラが好きだった人にとっては溜まったもんじゃない。

それが成長を最終回に持ってくるための「溜め」としてのマイナス描写であったとしても、今だと過剰に騒がれるからマイナスイメージがずっとついてまわる。

 

「原作厨」はそれそのものが悪いのでもなく、むしろ好きな作品をゴロに蹂躙された上で挿げ替えられかけた被害者の人が多いんじゃないかと思います。

そりゃ中身だけ別人のキャラが動いていてもその作品のファンにとっては便乗した二次創作にしか見えませんって。

 

最近はまだ「オリジナルアニメ」の企画が通りやすくなってるようにも感じるので、そこは良い変化ですね。

企画の問題があったとしても、自分の作風を推すなら他人の作品やキャラを踏み台にしないで自分でチャレンジしていく流れが欲しい所です。

少なくともメディアミックスとして3か月から半年程度で作品を引っ掻き回されて、後は全く関係ありませーんなんて態度取られたら溜まったもんじゃないですよね。

焼畑的な使い捨てアニメ化じゃなくて、ちゃんと終わっても原作で続いていく事を匂わせるアニメ化の方が好ましいです。

 

・余談:アニメ化の弱体化

アニメは強すぎる故に独特なイメージを押し付けたら、それでネットの声が広まってメディアミックスを潰しかねない一長一短の媒体ですが、逆にアニメを「弱い媒体」にしたらどうなるかというネタも。

具体的に今季だと「魔法科高校の劣等生」と「メカクシティアクターズ(カゲロウプロジェクト)」なのですが。

意図したか偶発的かはわからないけど新規ファンがつきにくくする事で「弱いアニメ」になって、逆に原作の邪魔にならない気がします。特に「メカクシ」の方。

単体のアニメとしての完成度よりも、メディアミックスの一部としてアニメを据え置く方法論も、それはそれで一つの「原作レイプ」対策なのではないでしょうか。

 

まぁ、「メカクシ」は原作者に丸投げした結果グダグダになってるだけな気もしないでもないですが。