超高速取引:米、規制強化を検討 「公平性ゆがむ」批判で

毎日新聞 2014年06月06日 21時37分(最終更新 06月06日 23時44分)

米国で超高速取引への批判が高まっている=ニューヨーク証券取引所で、ロイター
米国で超高速取引への批判が高まっている=ニューヨーク証券取引所で、ロイター

 超高速取引を駆使するのは巨額資金を運用するヘッジファンドなど。市場での値動きに合わせて瞬時に売買をしたいとの需要は年々高まっており、こうしたニーズに対応するため、東証でも2012年から1000分の1秒単位で売買できるシステムを導入した。証券会社などのサーバーを東証のシステムの隣に置き、売買注文をより速く処理できる「コロケーション」と呼ばれるサービスを始めるなど、投資家の囲い込みを図っている。「超高速取引への対応が遅れれば、取引が海外市場に流れ、国際競争に乗り遅れる」(取引所関係者)との危機感があるからだ。

 東証では、これまで超高速取引による株価の乱高下やシステム障害など目立ったトラブルは起きていないため、現時点で規制の予定はないが、米国での株価乱高下などの事例研究を始めた。「超高速取引は個人投資家を市場から締め出す」との批判がある一方で、過度の規制は投資家離れを引き起こし、取引所としての魅力低下につながるなどの懸念もある。

 大和総研の横山淳主任研究員は「超高速取引はインフラや技術の進化でもあり、世界的な流れだ。一方で、大きな問題が起きる前にリスクを検証し、投資家間の公平性を高めるルール整備も必要だ」と指摘している。【鈴木一也】

 【キーワード】超高速取引(HFT)

 「高頻度取引」とも呼ばれ、大規模なコンピューターシステムを使って、1000分の1秒単位で株式などの売買を繰り返す取引のこと。超短期の小口売買によって小幅な利益を積み上げる方法で、機関投資家やヘッジファンドが活用するなど世界の金融証券市場の主流になっている。米株式市場では取引の約5割を占める。

 映画にもなった「マネーボール」の著者であるマイケル・ルイス氏が今年3月、「超高速取引が市場を操作している」と批判する著書を発表したことをきっかけに、急速に関心が高まった。2010年5月に米市場で発生した「フラッシュ・クラッシュ」と呼ばれる瞬間的な株価の大暴落の一因と指摘されている。

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