社会

石綿飛散:被災地の解体現場16% 厚労省調査

1日前

 厚生労働省が東日本大震災の被災地で、建物解体に伴う石綿の除去作業現場80カ所を調べたところ、16%に当たる13カ所で石綿が周辺に大量に漏れていたことが分かった。調査は予告したものだったが、排気装置や作業場の隔離などに問題があった。被災地に限らない全国的な問題とみられ、厚労省は、環境省が所管する改正大気汚染防止法の施行(今月1日)に合わせて規則を改正し、対策強化に乗り出した。

 2011〜13年度に現場80カ所について、作業区域の外側で空気中の石綿濃度を測定した。厚労省は、被災7県を中心にがれき置き場や工事現場を含めた285カ所を調べており、この中から「NPO東京労働安全衛生センター」の外山尚紀(とやま・なおき)作業環境測定士が石綿除去作業現場を抜き出し、分析してまとめた。

 解体作業場周辺での石綿濃度に関する明確な基準はないが、大気汚染防止法が定める石綿関連工場の「敷地境界基準」(空気1リットル中に石綿繊維10本)を目安にすると、同基準を超えた場所が、福島県6、宮城県5、茨城県1、栃木県1の計13カ所あった。浄化装置の排気口付近や、区域を出入りする際に着替えなどをする「前室」周辺が多かった。

 いずれの現場もシートなどで隔離し、浄化装置などの設備はあったが、装置の能力や隔離の仕方が不十分だった。最高濃度だったのは昨年10月に福島県内で建物の吹き付け石綿を除去していた現場。前室付近で「空気1リットル中1365本」の石綿繊維が測定された。

 厚労省はこうした事態を踏まえ、「石綿障害予防規則」を改正。浄化後の排気口から石綿が漏れていないか点検する▽「前室」には更衣室と体を洗う場所を併設する▽前室は周囲より気圧を低く保つ「負圧」状態にする−−などを事業者に義務付けた。

 外山さんは「事前届け出があった現場で予告した調査だったにもかかわらず、高濃度で漏れていたことは深刻だ。除去業者を登録制にして技能レベルを保証する制度や、罰則強化、第三者による監視が必要で、今後も規制強化を求めたい」と指摘している。【大島秀利】

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