2014-06-08
学生たちが「戦争を学ぶ」場の語り部とトラブった過去の例を思い出しつつ。
http://www.47news.jp/CN/201406/CN2014060701001601.html
修学旅行で5月に長崎を訪れた横浜市の公立中3年の男子生徒数人が、爆心地周辺を案内していた被爆者で語り部の森口貢さん(77)に「死に損ない」などの暴言を吐き、森口さんが学校に抗議……グループから離れて行動していた数人の生徒が「死に損ないのくそじじい」と大声で叫んだ。森口さんは注意したが、この数人は周りの生徒にも「拍手しろ」などと言って妨害、暴言を続けたという。
この短い記事から状況を推測するだけ、という限定になるが、そこから判断する限りどう考えてもこの中学生がクソガキ、馬鹿餓鬼のたぐいである、という話に聞こえる。
もう少し表現を言い換えると毎年恒例の「成人式で騒ぐ」や「市長を野次る」という案件や、「盗んだバイクで走り出し」たり「夜の教室 窓ガラス 壊して回った」のたぐいにしか見えない。
だからマキタスポーツ氏が、その歌を「窓を壊された側」「バイクを盗まれた側」からの視点から歌った「アナザーストーリーソング」は本当にすばらしい傑作だと思います。
それはともかく。いくつかの論点に分けて
この児童を監視監督する「権力」の問題として。
こいつら、自分でもそもそもこんな戦跡とか行きたくなかったろうし、語り部氏の話も聞きたくなかったろう。興味ない人が聞かないですめば、こんな不幸な衝突は無かった…のだが、権力機構が「お前たち未成年は、この体験者の体験談を聞くべきである」と決定し、それを強制した以上、このような縁なき衆生も、その権力によって強制的に連れてこられてしまうわけである。
それならば権力は、「おとなしくその語り部の経験を拝聴させる」ことも権力を発動し、強制させるべきなのである。その児童生徒が本当に感動して聞くか、何の興味もなく、右耳から入って左耳から抜けるか、それはどうでもいい内面の問題だから干渉しない。
とにかくおとなしく聞かせることだ、権力によって。
とりあえず年配者に敬意を払え、というマナーの問題として
ここからは逆説だが、大真面目に言う話ですお。
これが「広島」の代わりに沖縄でも、逆に「靖国」でも「知覧」でもいい。原爆とその悲惨さ、の代わりに「いかに彼らはアジア解放のための聖戦を勇敢に戦ったか」「特攻が『永遠の0』であったか」を語ったとしても、年配の人がその経験談を語るとなれば、内容に関係なく、相応の経緯を払うべきなのである。
その意見がとても受け入れがたくて、反対意見があるとしたら、それはそれでいいいし反論も可能だろうが、当然ながらそれは質疑応答時間なり、そういう場面で行えばいいのである。
たとえば自分が、最悪の議論を想定して…「主体の太陽、金日成元帥様が南朝鮮解放闘争を行っていたとき、私も日本で火炎瓶を投げてそれをサポートしていました。青春の日々だなあ…懐かしい」とトクトクと語ってたとしても、その人が語るという催しなら、いくら受け入れがたくともその発言を妨害しないし、反論するなら質疑応答の時間なりに、丁寧な口調で問うていくわ。
上の二点で、語り部氏は純然たる被害者であり、中学生とその監督者が愚かであることはいうまでもない、と言えるだろう。
そもそも、聞く意欲のないやつらを連れてくなよ。聞きたいやつにだけ聞かせろ…という議論も可能だ。
戦争の歴史や平和の問題に興味の無い人は、どうぞ別のところを選んで遊んでなさい。
本当に、彼らの体験談を聞きたいと思っている人だけ聴きに行きなさい。
うむ、リベラルだ。
迷ったときは、オトノナルホウヘ。
被爆地の語り部に「お前はアジア侵略の加害の歴史を語っていない!」とつるし上げる学生は…実在する!!!
さて、この小見出しの話は…ああ、残念、またもや「資料を持ってはいるが、どこにあるのか分からない案件」になってしまった。
この本に載っていた。
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ブラック・ファックス―あるいは「昭和」から「平成」、時代を読む
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警察官拾得金ネコババ事件、電力会社の接待旅行、「公安」と新聞社の気になる関係、人権侵害のエイズ法案、「昭和天皇」が残した課題、アジア留学生差別、日本人は精神的難民か、婚外子・私生児差別を許すな、農薬で危ないゴルフ場とスキー場の問題などなど、日本人が抱えている宿題を鋭く指摘する辛口コラム集。
故黒田清氏、現在も活躍する大谷昭宏氏らが中心になって、読売新聞内の権力闘争でナベツネに破れた黒田氏らが「黒田ジャーナル」を作り、プレイボーイに連載していたという時事評論コラムだ。
機会があれば読んでみることをおススメするが、1980年代から90年代前半の「良識」がギュッと詰まっている。たとえば「朝鮮総連が危険な団体だという主張はけしからん、差別だ」みたいなコラムとかね…。さすがに黒田、大谷氏は読ませるところもあるが、ほかの人のははっきり落ちてるし。週刊プレイボーイだったかプレイボーイだったかあいまいだが、こういう感じのコラムが載る、というのがなんとなく雑誌の風でもあったらしい。
この中に、まさに上の題に書いた様な話があったのである。
本当は原文を写せればすごく迫力、迫真性があるのだが、残念ながら記憶に基づいて、あくまでも大まかな要約を書く。
・広島か長崎に学生の修学旅行生がやってきて「語り部」の話を聞いた。
・そしたらその学生が”意識が高く”「あんたの話にはアジア侵略の加害性への意識が無いんだよ!」的なつるし上げ的な糾弾(あるいは全うな批判?)があった。
・語り部は「私は体験を語っているだけなのに…やめたい」と。
これを紹介したコラム(大谷氏…だったと思う)では、もちろん学生のほうを糾弾、語り部をかばっていた、と記憶している。
いま見たら、中古は送料べつとして「1円」から買えるらしいから、あやふやな記憶ではなく細部を確認したい人はめいめい買って確認してくれ。
沖縄?の語り部の話を聞いた生徒が「自分に酔ってるみたい」などと批評した感想文を書いて問題に。
これは、自分の記憶だと90年代半ばか、後半に起きた話だったと思う。
週刊朝日に池澤夏樹氏が当時連載を持っていて、そのコラムでもこの話をとりあげていた…というのはほぼ確実だ。
コピーしてたんだけどな…。
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うーん、特定しづらいが、1995-1998年あたりがあやしい……。
で、思い出したぞ。たしかそういう
「沖縄(広島か長崎の話かもしれない)の語り部はわざとらしい。自分に酔っている様に見えた」という感想文がよせばいいのにあちらの当事者の目にとまって激怒され、新聞沙汰になった。
それに対して評論家・加藤典洋氏が「この子達の実感は粗雑かもしれないが大切だ。ここから、こういう実感から始めなければリアルは無い」と評価し、
池澤氏は「いや、やっぱりそこまで評価する必要はないと思う。ただし、彼らに伝える新しい何かが必要だよね…」みたいな話だったすな。
そして、「青山学院高等部入試問題」騒動
青学高等部の入試問題で、ひめゆり部隊については本当は何と書かれていたのかA
んな報道があったわけですが、
→入試問題で「ひめゆり学徒体験談は退屈」 青学高等部(朝日新聞)
2005年06月09日23時18分
http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20050615/p1
青山学院高等部(東京都)の今年2月の一般入試の英語で、ひめゆり学徒隊の沖縄戦体験者の証言を聞いた生徒が「退屈だった」と感じたという趣旨の長文読解問題が出題されていたことが分かった。同校は「配慮を欠いた問題だった。深くおわびしたい」としている。
同校によると、生徒の感想文を紹介する形式だが、感想文は実在せず、同校の教諭が入試のために、自身の体験をもとに作成。約1000人が受験した。
出題文は修学旅行で沖縄へ行った生徒は防空壕(ぼうくうごう)を体験した後、ひめゆり学徒隊の体験談を聞き、「正直言って、彼女の話は退屈で飽きてしまった。聞けば聞くほど防空壕の強烈な印象が薄れていった。彼女はその話を何回もしており、非常に話し上手になっていたと思う」と感想を持つ。問題では「なぜ筆者はひめゆりの話が好きでなかったのか」と聞き、「彼女の話しぶりが好きでなかった」など4つの選択肢から答えを選ばせた。
(略)
「亡くなった同窓生たちに大変失礼だと思う。そういう感想を持った人がいたとしても、それを入試の問題にする感覚は理解できない」と残念がった。
英文の中で、「生徒」は壕に入って暗闇を体験した後、ひめゆり平和祈念資料館で語り部の証言を聞く。「正直に言うと彼女の証言は退屈で、私は飽きてしまった。彼女が話せば話すほど、洞窟で受けた強い印象を忘れてしまった」と記した。
さらに、「彼女は繰り返し、いろんな場所でこの証言をしてきて、話し方が上手になり過ぎていた」などと“論評”。設問では、「生徒」がなぜ語り部の話を気に入らなかったのかを問い、選択肢から正解として「彼女の話し方が好きではなかったから」を選ばせるようになっている。
入試問題に目を通したひめゆり平和祈念資料館の本村つる館長は「八十歳近くになっても、話したくないつらい体験を話しているのは、むごい戦争を二度と起こさないよう若い世代に伝えるためだ。それをむち打つような文章は許せない」と、沈んだ様子で話した。「感想は百人百様でも、試験に出題して正解を決めるようなことはすべきでない」と強調した。
石原昌家沖国大教授は「この入試問題は、極限状況の戦争を生き抜き、身を粉にして語る体験者を思いやれないような、教師の資格を失った者が教壇に立っている事実を証明している」と批判
「なぜ作者は、ひめゆり平和祈念公園で聞いた話が好きではなかったのですか」という設問がありました。その正解は「なぜなら、彼女の話し方が好きではなかったからです」と。こういうところに文章に丸をつけるという、丸なのか、それを選ばせるのかちょっとわかりませんけれども、こういう問題に偶然ぶつかってしまいました。
戦後60年がたちまして、戦争風化への強い懸念や、平和教育の一層の充実など、いろいろなことが取りざたされておりますけれども、こんな文章、ましてや、これが高校の入試問題で出されていたということ。それで、こんなお粗末なものが出てくるというのは、大変に残念といいますか、腹立たしさを感じます。
この節目の年に、今一度原点に立って、改めて沖縄から何を、どのように発信していくか見直す必要があると思います。
ややもすると、感情に流されてしまいがちな平和教育ではありますけれども、感情だけではなく、理論的に平和へのプロセスを研究することが必要で、事実を事実として伝えていくことが必要であると私は考えています。
また、日本国唯一の地上戦が行われた沖縄(※ママ。引用者註)ということは、アジアにおいても日本という枠にとらわれずに、平和について語るパスポートを持っているということで、つまり、同じ戦争体験や同じ境遇を持つ者としての共感を持ちながら話ができる
さて、記憶にある3例を紹介できたところで、
仮定の話として「礼儀正しく、質問が許される状況なら語り部を批判する」ことを考えよう。これは全然いいのだろう。右から左へ、いや思想じゃなくて耳の話だが(笑)抜けるよりずっといい。
語り部じゃないが、私も教育…つまり権力が我々に見ろ、読めと強制力を以って強いた「平和教育」、あるいはその反対?の「伝統教育」に、文化的にも政治的にも、今から思えば実にお粗末なコンテンツが多々紛れ込んでいた。これは今からの評価だけでなく、当時からヒデーなあと思ったりしましたので自信を持って言えるな。
何度かはそれを感想で公言して、非常に着地点を失わせたこともある。
当時は報道されなくてよかった、といっておしまい。
また最後に「嫌う権利」という問題ともつながるかな、としておきます。
語り部の話を聞くという催しが、
あるいは語り部の話が
嫌いという、それ自体は問題なくて…だから他の人が話を聞いてるのを妨害したり、「死にぞこない」といった罵倒罵声を浴びせたりということ、それが問題なのである。
そこは切り分けた上で、彼らには同情の余地なし、といえよう。
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