水俣病語り部に差別電話 会長宅「そんなに金欲しいか」 [熊本県]
水俣病認定患者で熊本県水俣市立水俣病資料館「語り部の会」会長(56)の自宅に5月、「そんなに金が欲しいのか。(水俣病の)被害者のふりをして。もうやめんか」などと中傷する電話が計3回かかっていたことが7日、分かった。会長は「根深い水俣病への差別や偏見が現在もある。全ての被害者に対する侮辱行為で、行政は人権問題として啓発に力を注ぐべきだ」と訴えている。
会長によると、電話があったのは、水俣病犠牲者慰霊式が同市で開かれた5月1日。午後9時前、テレビで慰霊式に出席した会長の姿が放送された直後に電話が鳴り、会長の妻が出たところ、男性の声で一方的に中傷してきたという。妻が身元を尋ねたところ「福岡」と言って切れた。
午後10時すぎまでに同じ男性とみられる電話がさらに2回あり、男性は「いつまであんたどま騒ぐとか」「あんたどんがこげんこつすっでおかしゅうなっとたい」などと言い放った。
会長は当時外出中だったため、翌日、電話機に表示された発信元の携帯電話番号を警察に連絡した。会長宅にはその後、今月6日までに夜間や早朝に十数回、非通知の無言電話があった。
会長は24日に面会予定の蒲島郁夫知事に水俣病への差別や偏見の解消に取り組むよう申し入れる考えだ。
水俣病に関する人権問題に詳しい熊本学園大水俣学研究センター長の花田昌宣教授は「水俣病問題が徐々に理解され、最近では差別事案が表面化することがなかった。悪質な行為としか言いようがなく、行政などと一体で解決する必要がある」と話している。
=2014/06/08付 西日本新聞朝刊=