■ 最後のテストマッチブラジルW杯前の最後のテストマッチとなるザンビア戦がフロリダ州タンパにあるレイモンド・ジェームス・スタジアムで行われた。ザンビアのFIFAランキングは76位となっているが、2012年に行われたアフリカネイションズカップで初優勝を飾ったことで大きな注目を集めた。ブラジルW杯はアフリカの2次予選でガーナと同組となる不運もあって、3次予選に進むことも出来なかった。
日本は「4-2-3-1」。GK西川。DF内田、吉田、今野、長友。MF山口蛍、遠藤、岡崎、本田圭、香川。FW柿谷。怪我で欠場するのでは?という報道もあったDF長友はスタメン出場で、キーパーは昨年11月のオランダ戦以来のスタメンとなるGK西川で、CBはDF森重がベンチスタートでDF今野が起用された。注目の1トップはコスタリカ戦でゴールを決めたFW柿谷がスタメンとなった。
■ 2点ビハインドからの逆転勝利試合の序盤は日本の出足が鋭くて「いい入り方」ができたが、前半9分にザンビアが右サイドからクロスを入れるとDF内田に競り勝ったMFクリストファー・カトンゴが決めてザンビアが先制すると、前半28分にはCKからMFシンカラが決めて2点目を挙げる。2点を追う日本は前半40分にMF香川が得たPKをMF本田圭が決めて1点差に迫る。前半は2対1とザンビアがリードして折り返す。
後半開始からFW柿谷に代えてFW大久保を投入。さらにFW大迫、DF森重、DF酒井宏とフレッシュな選手を次々に投入すると、後半28分に左サイドでボールを受けたMF香川がカットインして右足でゴール前に鋭いクロスを入れる。シュートではなくてクロスだったと思うが、MF大久保の動きに釣られた相手キーパーが処理できずにそのまま決まって日本が2対2の同点に追い付く。
さらに直後の後半30分に攻撃参加した途中出場のDF森重の絶妙の切り返し&クロスからゴール前に飛び込んできたMF本田圭が決めて3対2と逆転に成功する。しかし、後半44分に途中出場のMFルバンボ・ムソンダのシュートがブロックに来たMF山口蛍の足に当たってコースが変わってゴールイン。ややアンラッキーな形で3対3の同点に追いつかれてしまう。
失点直後に日本はMF遠藤を下げてMF青山敏を投入。すると再開直後のプレーでMF青山敏がゴール前に得意のミドルパスを供給すると、絶妙のタイミングで走り出して、絶妙のコントロールからシュートチャンスを作ったMF大久保が左足で決めて土壇場で勝ち越しに成功する。結局、両チーム合わせて7ゴールが生まれるという乱打戦を制した日本が4対3で競り勝った。
■ 土壇場での劇的な決勝ゴール先に2点を奪われたこと、3対2と逆転しながら逃げ切ることができなかった点など、反省材料はいくつかある。課題は少なくないが、最後の最後でメンバーに選ばれて、起爆剤となることが期待されているMF大久保が決勝ゴールを決めるというドラマチックな展開となった。非常にいい流れといい雰囲気の中、W杯の本番を迎えることができそうなことは何よりの朗報である。
MF大久保がヒーローになったが、3失点目は右サイドハーフに回っていたMF大久保の守備が良くなかった。エネルギーを持った状態でフリーランニングを開始した相手選手に付いて行くことができなくて、それによって後ろのマークが1つづつずれてしまった。フリーの選手ができて、シュートを放った選手へのチェックが遅れた原因なので、このときの守備は大きな反省材料と言えるだろう。
そのまま終わっていると、「MF大久保のサイドハーフは厳しい。」とならざる得ない展開だったが、最後に千両役者ぶりを発揮した。MF青山敏の縦パスも素晴らしかったが、MF大久保のフリーランニングとボールコントロールは秀逸だった。ザンビアの選手はアフリカ特有の強さを持っているので、接触プレーになると不利であるが、このときは接触されてもコントロールがぶれなかった。
ちょっと体が流れており、左足のシュートは難易度が高かった。体が強くないと大きくふかす可能性の高いシュートだったが、見事にネットを揺らした。国見高校時代からそうだったが、馬力があるところがMF大久保の一番いいところである。これが国際Aマッチでは6ゴール目で、2008年11月13日のシリア戦以来となるゴールだったが、この状況で決勝点を奪える選手は価値がある。
■ 誰からも愛されるキャラクターザッケローニ監督はずっと前から「経験のある選手は直前の合流でも問題ない。」と語っていたが、結局、最後の最後に召集したのはMF大久保だった。常々、語っていた「経験のある選手」というのは彼だけを指しているわけではないと思うが、土壇場でMF大久保を召集したことがあらゆる部分でプラスに働いている。全てを想定していたのであればザッケローニ監督は相当な策士である。
もちろん、昨シーズンの途中からハイパフォーマンスを続けていたので、「もう少し早い段階で日本代表に召集しても良かった。」と思うが、昨年の10月や11月の欧州遠征で召集していたり、今年3月のNZ戦で召集していたり、4月の日本代表候補合宿で召集していたら、サプライズ感は出なかった。なかなか呼ばれなかったことで彼に対する期待感がMAX付近まで高まったことは間違いない。
起用されるポジションが1トップになるのか、トップ下になるのか、サイドハーフになるのか、最終段階になっても分からないが、どのポジションであっても、期待されるのは「ゴールを奪うこと」である。おそらく、本大会ではベンチスタートが基本になると思うが、ゴールが必要なタイミングで投入されることが予想されるMF大久保が「こでゴールを奪った。」という意味はとてつもなく大きい。
土壇場で決勝ゴールが決まった瞬間、本人も相当に喜んでいたが、控え選手も含めた周りの選手が同じくらい喜んでいた。31歳とベテランになって、年下の選手がほとんどであるが、一緒にプレーした経験のあるMF香川やFW柿谷といったC大阪組だけでなく、みんなから慕われていることがよく分かる光景だった。「最後にMF大久保が全部持っていった。」と言えるだろう。
20歳前後の頃と比べるとはるかに大人になったが、それでも子どものようなところはある。いい意味でも、悪い意味でも、影響力の強い選手なので、マイナスに作用する可能性も無きにしも非ずだったが、この光景を見ると杞憂に終わったと断言できる。危うさというのもMF大久保の魅力の1つであり、「誰からも愛されるキャラクターであること」もMF大久保という選手の武器である。
■ MF本田圭が2ゴールに絡む。最後にMF大久保が劇的な決勝ゴールを決めたので、彼に持っていかれたところもあるが、2ゴールを挙げたMF本田圭も逆転勝利の立役者の1人である。壮行試合のキプロス戦は不十分な出来で、先日のコスタリカ戦も賛否両論あるプレーだった。「本田不要論」も出始めていたが、この日はボールもおさまって、不用意なミスも少なくて、2ゴールも決めて、十分なプレーを見せた。
結局、テストマッチは3試合ともフル出場となったが、「どうにかしてMF本田圭の状態を上げたい。」と考えていたザッケローニ監督の荒治療がひとまずうまくいったと言える。よほどのことがない限り、MF本田圭を外すことはできないので、コンディションを上げて、自信を回復してもらう必要があった。MF本田圭の復調というのは、この試合における一番の収穫と言えるかもしれない。
移籍先のACミランでのプレーがあまり宜しくなかったのは事実である。もちろん、コンディションを含めたMF本田圭自身にも問題があったが、チームにも問題があった。ACミランでデビューを飾った直後にアッレグリ監督が解任されて、監督未経験であるセードルフ監督になったことは大きな誤算で、プレースタイルをチームメイトに十分に理解されることなくシーズンが終わってしまった。
現地のイタリアのメディアがMF本田圭についてどのように評価したのか?は詳しくは分からないが、MF本田圭がどういう選手で、どのくらいの力を持っているかというのは、イタリアのメディアよりもはるかに日本のメディアやサポーターが知っている話である。「MF本田圭についてイタリアのメディアがどう報じているか?」を必要以上に気にするのはバカバカしいことだと思う。
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