物価連動国債:個人向けに来年1月に解禁 

毎日新聞 2014年05月13日 22時28分

 ◇インフレ時でも資産価値が目減りせず

 財務省は13日、物価変動に合わせて元本が増減する「物価連動国債」について、これまで認めていなかった個人の保有を2015年から解禁すると発表した。同国債はインフレ時でも資産価値が目減りしないのが特徴。政府がデフレ脱却を目指す中、インフレに備えた運用への関心が高まっており、財務省は個人が保有できる国債の選択肢を広げながら、国債発行の安定化につなげたい考えだ。

 麻生太郎財務相が同日の閣議後会見で明らかにした。物価連動国債は物価上昇に合わせて元本が増えた際、個人への課税の取り扱いが難しく、保有は金融機関などの機関投資家に限られていた。しかし、金融所得課税の見直しで物価連動国債で得た「譲渡所得」を16年から申告するよう制度を整備。16年以降に満期を迎える個人向け物価連動国債の発行が可能になった。

 物価連動国債の個人保有を解禁するのは15年1月から。14年度は個人向けも含めて1兆6000億円の発行を予定している。過去に発行した分も含めると14年度中に市場に出回る物価連動国債は3.6兆円になる見通し。麻生氏は会見で「デフレから脱却するとなると、物価連動国債を買いたいというのは法人に限らず個人も多いのは当然だ」と述べ、個人の需要が拡大していけば追加発行していく考えを示唆した。

 13年度末時点で、国債と借入金、政府短期証券を合計した「国の借金」は1024兆9568億円。うち国債は前年度末から32兆2895億円増えて過去最大の853兆7636億円に膨らんだ。社会保障費の増大などで今後も国債発行は避けられないが、個人の国債保有比率は全体の2.2%に過ぎない。

 金融機関の間では「インフレ期待が高まる中、個人顧客のニーズを満たせる」(りそなホールディングスの東和浩社長)と個人向け連動国債の解禁を歓迎する声が上がっており、財務省はこれを機に個人の国債保有比率を高めていきたい考えだ。【三沢耕平】

 ◇物価連動国債

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