旧ソ連3カ国が経済同盟条約に署名、ウクライナは不参加
[アスタナ 29日 ロイター] - ロシア、カザフスタン、ベラルーシの3カ国の大統領は29日、カザフスタンの首都アスタナで、ユーラシア経済同盟を創設する条約に署名した。各国議会の批准手続きを経て、2015年1月1日に発足する
ロシアは米国、欧州連合(EU)、中国に対抗し得る経済ブロックの確立を目指す考えだが、親ロシア派と親欧米派の対立で揺れるウクライナが参加しないことで、プーチン大統領が望む力は発揮できないとの見方も出ている。
それでも人口1億7000万人、2兆7000億ドルの域内総生産(GDP)を抱える経済圏が誕生する。カザフスタンとロシアは産油国でもあるため、プーチン大統領にとり、クリミア編入を受け欧米が対ロシア制裁を発動させたもののロシアは孤立することはないと示す手段となる可能性がある。
経済同盟の下で3カ国は物品、サービス、資本、労働力の相互の自由な移動を保証。主要経済分野の政策協調も進める。3カ国は2010年に関税同盟を発足させており、経済同盟結成で経済統合が一段と進むことになる。
プーチン大統領は署名にあたり、「3カ国は主権を完全に保全しながら、統合の新たな段階に移行する」と述べた。
交渉の過程でカザフスタンは、1991年の旧ソビエト崩壊後に手に入れた国の独立性が弱められることがないよう強く主張し、政治同盟創設に向けたロシアに抵抗。プーチン大統領が「主権」について言及したのはこうした背景があったためと見られる。
カザフスタンのナザルバエフ大統領は、3カ国の経済同盟は「西洋と東洋との間の経済的な架け橋となる」と指摘。ベラルーシのルカシェンコ大統領はウクライナが参加しなかったことに言及、「同国にとり(経済同盟参加は)負荷が重過ぎた」と述べた。
ユーラシア同盟構想はナザルバエフ大統領が1994年に初めて提示。当時はほとんど注目を集めなかった。ここにきて旧ソ連構成国の結束を目指すプーチン大統領の意向に沿うものとなったが、ロシアに取り経済的な重荷となる可能性もある。
ロシアのシャタロフ財務次官は3月、ロイターに対し、ロシアはベラルーシとカザフスタンに対し年間約60億ドルの支援を行っているが、2015年にユーラシア経済同盟が発足し、貿易障壁が撤廃されるなどした後は、この額が300億ドル増加するとの見通しを示している。
ユーラシア経済同盟には、アルメニアとキルギスが加盟を検討。ただ、アゼルバイジャンやトルクメニスタンなど旧ソ連構成国のうち主要なエネルギー産出国は加盟しないとの立場を明確にしている。
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