エゴイスティック・ラブ
ずるい彼
とにかく、言い訳じゃないけど、言いたいことは言っておこう。
私は、たくましい頼雅(らいが)さんの胸板を見ながら、話し始めた。
「えっと・・・私、どうしてもあいつのところには帰らないって本人に直接言いたくて・・・。これ以上逃げ回る生活は、もう嫌だったし、あいつに直接会うことで、もうあいつに怯えてないって確かめたかった気持ちもあったの。何より、一緒に帰らなかったら、みんなを傷つけるって脅してきたのが、もう我慢できなくて」
もうダメ。
言いたいことが止まらない。
「みんな・・・神谷家の人たちは、私にとって、とても・・・とても大切な人たちだから、だから私が守らなくちゃって思ったのに・・・それなのに、私・・・またみんなに助けられて・・・守られてばかりで、私、ホントに役に立たない・・・」
「おまえは役立たずじゃないって言っただろ?もう忘れたのか、バカ」
あ、また私・・・頼雅さんにそっと抱きしめられた。
「ごめんな。帰るの遅くなって。日本出てたから、飛行機の時間とか乗り換えとか、いろいろあってさ」
「え!」
そのとき私は、自分が泣いていたことに気がついた。
さすがは頼雅さんだ。
私がビックリして泣き止むツボを心得ている。
「場所までは言えねえけどな。これでも最速で帰ってきた。まったく。おまえには、いつもヒヤヒヤさせられる」と言いながら、その口調は面白がってるように真希には聞こえる。
「あのぅ・・・頼雅さんは、私が一人であいつに会いに行くのが、分かっていた・・・とか・・・」
「まあな。ここんとこ、おまえのまわりに、また蛇野郎の邪気を感じ始めてたからな」
この人まであいつを蛇呼ばわりしてる!
やっぱりあいつには、蛇が似合ってるってことか。
私はまたふき出しそうになるのを、グッとこらえた。
「親父は留守で、俺も家空けることになるから、弟たちに家とおまえのことを託さなきゃいけなかったのは、正直すげー不本意だったが、これもまた引き寄せたんだろうな。ま、とにかく、おまえのオーラが、またヘンな動きし始めたから、弟たちに絶対おまえを見つけ出せと命令しといてよかった」
「命令って・・・?」
「あー。俺たち、親父もだけど、言葉以外でも会話できるんだ。テレパシーとも言えるのか?だからおまえの動向は、逐一俺に報告されてたぞ」
「ええっ!!そんなの聞いてません!」
まあ、この人たちの特別な力に関しては、もう慣れたと思っていたけど・・・まだまだ私が甘かったわ。
そんな私に頼雅さんは、「今言った」と言い放つ。
その言い方が、またしれっとしてて。
元々怒ってはなかったけど、呆れるのを通り越して、ついに笑ってしまった。
そんな私の顔を見ながら、彼は「そうそう。おまえは笑ってるほうがいい。おまえに泣かれると、俺、弱いんだよ」と言って、また私を自分の胸元に引き寄せる。
弱くなる頼雅さんなんて、想像もできないな。
「よくがんばったな」
「あの・・・一人で出歩くなという言いつけを破ったことは、怒らないんですか?」
「予想してたからな。それに怒ったところで、また同じ状況に陥ったら、おまえはまた一人で蛇野郎に会いに行くんだろ?」
「うん、まあ・・・そうですね」
「ありがとな、俺たちのことを守ってくれて」
「う・・・ずるいですよ、頼雅さん・・・」
また涙が出てきてしまった。
でも今は、彼の顔を見ていないから、少しだけ泣かせてもらおう。
「なんだよ。俺の何がずるいんだ」
「そうやって私を甘やかすことがです。頼雅さんだけじゃなくて、他のみんなだって・・・みんな、私に優しすぎなんです」
「いいじゃねえか。女には優しくしろって、親父とおふくろから教え込まれたんだ。それに、今まで女を甘やかして、ずるいって言われたことねえぞ」
「そこでご両親や元カノたちを出さないでください。ずるいです」
「またずるい、か」
あ。今頼雅さん、笑った。
この人は、今の会話を楽しんでいる。
そして私も楽しんでいる。
顔は泣いてるのに心は笑っているような、ヘンな感じだ。
「とにかく、おまえが無事でよかった」
その言葉は、私の心に温かく染み入った。
「頼雅さん」
「なんだよ」
「おかえりなさい」
「ああ。ただいま」
この日私は、久しぶりにソファで眠った。
もちろん頼雅さんから、「おまじない」をもらって。
「2日、いや1日半くれ」
「はい?1日半・・・ですか?」
翌朝、久しぶりに6人兄弟全員そろった席で、頼雅さんは私にこう言ってきた。
1日半くれと言われても・・・どうあげたらいいのかしら。
困惑している私の顔が読めたのだろう。
私の場合、考えていることが分かりやすいから。
「ホントは今日にでも蛇野郎を葬りたかったが、思ったより時間がかかりそうだ。だから明日の午後、ケリをつける」
さっきから、「葬る」とか「ケリをつける」とか、物騒な言葉がポンポン彼の口から出てるんですけど!
「意外と時間かかるね」
「まーな。あいつらの融通、きかねえんだよ」
「でも蛇男はラッキーじゃね?一日寿命が延びたんだし」
だからそれをフツーに会話している神谷兄弟なんですけど!
「まあ、どっちにしてもしょうがないよね」
「今日家にいるのは」
「俺ー」「と僕」
新(あらた)くんと武臣(たけおみ)さんか。最強のコンビだ。
「というわけで、真希さんは今日、うちでおとなしくしてようね」
何か、私の知らないところで、どんどん話が進んでいるから、全然ついていけてないけど・・・。
前科もあるし、ここは大人しく従おう。
真希は素直に「はい」と言ってうなずいた。
この日私は、一日家の中で過ごした。
新くんと武臣さんが一緒にいてくれたおかげで、退屈な思いをすることは全然なかったし、それに夕方には、また6人兄弟全員そろって晩ごはんを食べることができた。
寝る前にソファに座っていると、頼雅さんが来た。
待ってた・・・わけじゃないけど、来てくれるような気がしていた。
彼は私の額に、おまじないのキスをしてくれた。
「明日の午後だ」
「はい」
「あの野郎におまえを傷つけることは、二度とさせない」
日和ちゃんも言っていたけど、彼はウソをつかない。
元々彼のことは信頼しているけど、余計彼の言葉に真実味を感じる。
困っていた私が放っておけなくて、手を差し伸べてくれた優しい頼雅さんとも、もうすぐお別れ・・・なのかな。
「なんだよ」
「いえ。何でもありません。頼雅さん、おやすみなさい」
「おやすみ」
これ以上頼雅さんのそばにいると、何を言い出すか分からなかった私は、スタスタと自室へ引き上げた。
あいつがサッサと部屋へ行ってくれて助かった。
じゃなけりゃ俺は今頃あいつを抱きかかえて・・・。
明日だ。明日まで待とう。
頼雅は両手をあげてグーンと伸びをしながら、自室へ引き上げた。
私は、たくましい頼雅(らいが)さんの胸板を見ながら、話し始めた。
「えっと・・・私、どうしてもあいつのところには帰らないって本人に直接言いたくて・・・。これ以上逃げ回る生活は、もう嫌だったし、あいつに直接会うことで、もうあいつに怯えてないって確かめたかった気持ちもあったの。何より、一緒に帰らなかったら、みんなを傷つけるって脅してきたのが、もう我慢できなくて」
もうダメ。
言いたいことが止まらない。
「みんな・・・神谷家の人たちは、私にとって、とても・・・とても大切な人たちだから、だから私が守らなくちゃって思ったのに・・・それなのに、私・・・またみんなに助けられて・・・守られてばかりで、私、ホントに役に立たない・・・」
「おまえは役立たずじゃないって言っただろ?もう忘れたのか、バカ」
あ、また私・・・頼雅さんにそっと抱きしめられた。
「ごめんな。帰るの遅くなって。日本出てたから、飛行機の時間とか乗り換えとか、いろいろあってさ」
「え!」
そのとき私は、自分が泣いていたことに気がついた。
さすがは頼雅さんだ。
私がビックリして泣き止むツボを心得ている。
「場所までは言えねえけどな。これでも最速で帰ってきた。まったく。おまえには、いつもヒヤヒヤさせられる」と言いながら、その口調は面白がってるように真希には聞こえる。
「あのぅ・・・頼雅さんは、私が一人であいつに会いに行くのが、分かっていた・・・とか・・・」
「まあな。ここんとこ、おまえのまわりに、また蛇野郎の邪気を感じ始めてたからな」
この人まであいつを蛇呼ばわりしてる!
やっぱりあいつには、蛇が似合ってるってことか。
私はまたふき出しそうになるのを、グッとこらえた。
「親父は留守で、俺も家空けることになるから、弟たちに家とおまえのことを託さなきゃいけなかったのは、正直すげー不本意だったが、これもまた引き寄せたんだろうな。ま、とにかく、おまえのオーラが、またヘンな動きし始めたから、弟たちに絶対おまえを見つけ出せと命令しといてよかった」
「命令って・・・?」
「あー。俺たち、親父もだけど、言葉以外でも会話できるんだ。テレパシーとも言えるのか?だからおまえの動向は、逐一俺に報告されてたぞ」
「ええっ!!そんなの聞いてません!」
まあ、この人たちの特別な力に関しては、もう慣れたと思っていたけど・・・まだまだ私が甘かったわ。
そんな私に頼雅さんは、「今言った」と言い放つ。
その言い方が、またしれっとしてて。
元々怒ってはなかったけど、呆れるのを通り越して、ついに笑ってしまった。
そんな私の顔を見ながら、彼は「そうそう。おまえは笑ってるほうがいい。おまえに泣かれると、俺、弱いんだよ」と言って、また私を自分の胸元に引き寄せる。
弱くなる頼雅さんなんて、想像もできないな。
「よくがんばったな」
「あの・・・一人で出歩くなという言いつけを破ったことは、怒らないんですか?」
「予想してたからな。それに怒ったところで、また同じ状況に陥ったら、おまえはまた一人で蛇野郎に会いに行くんだろ?」
「うん、まあ・・・そうですね」
「ありがとな、俺たちのことを守ってくれて」
「う・・・ずるいですよ、頼雅さん・・・」
また涙が出てきてしまった。
でも今は、彼の顔を見ていないから、少しだけ泣かせてもらおう。
「なんだよ。俺の何がずるいんだ」
「そうやって私を甘やかすことがです。頼雅さんだけじゃなくて、他のみんなだって・・・みんな、私に優しすぎなんです」
「いいじゃねえか。女には優しくしろって、親父とおふくろから教え込まれたんだ。それに、今まで女を甘やかして、ずるいって言われたことねえぞ」
「そこでご両親や元カノたちを出さないでください。ずるいです」
「またずるい、か」
あ。今頼雅さん、笑った。
この人は、今の会話を楽しんでいる。
そして私も楽しんでいる。
顔は泣いてるのに心は笑っているような、ヘンな感じだ。
「とにかく、おまえが無事でよかった」
その言葉は、私の心に温かく染み入った。
「頼雅さん」
「なんだよ」
「おかえりなさい」
「ああ。ただいま」
この日私は、久しぶりにソファで眠った。
もちろん頼雅さんから、「おまじない」をもらって。
「2日、いや1日半くれ」
「はい?1日半・・・ですか?」
翌朝、久しぶりに6人兄弟全員そろった席で、頼雅さんは私にこう言ってきた。
1日半くれと言われても・・・どうあげたらいいのかしら。
困惑している私の顔が読めたのだろう。
私の場合、考えていることが分かりやすいから。
「ホントは今日にでも蛇野郎を葬りたかったが、思ったより時間がかかりそうだ。だから明日の午後、ケリをつける」
さっきから、「葬る」とか「ケリをつける」とか、物騒な言葉がポンポン彼の口から出てるんですけど!
「意外と時間かかるね」
「まーな。あいつらの融通、きかねえんだよ」
「でも蛇男はラッキーじゃね?一日寿命が延びたんだし」
だからそれをフツーに会話している神谷兄弟なんですけど!
「まあ、どっちにしてもしょうがないよね」
「今日家にいるのは」
「俺ー」「と僕」
新(あらた)くんと武臣(たけおみ)さんか。最強のコンビだ。
「というわけで、真希さんは今日、うちでおとなしくしてようね」
何か、私の知らないところで、どんどん話が進んでいるから、全然ついていけてないけど・・・。
前科もあるし、ここは大人しく従おう。
真希は素直に「はい」と言ってうなずいた。
この日私は、一日家の中で過ごした。
新くんと武臣さんが一緒にいてくれたおかげで、退屈な思いをすることは全然なかったし、それに夕方には、また6人兄弟全員そろって晩ごはんを食べることができた。
寝る前にソファに座っていると、頼雅さんが来た。
待ってた・・・わけじゃないけど、来てくれるような気がしていた。
彼は私の額に、おまじないのキスをしてくれた。
「明日の午後だ」
「はい」
「あの野郎におまえを傷つけることは、二度とさせない」
日和ちゃんも言っていたけど、彼はウソをつかない。
元々彼のことは信頼しているけど、余計彼の言葉に真実味を感じる。
困っていた私が放っておけなくて、手を差し伸べてくれた優しい頼雅さんとも、もうすぐお別れ・・・なのかな。
「なんだよ」
「いえ。何でもありません。頼雅さん、おやすみなさい」
「おやすみ」
これ以上頼雅さんのそばにいると、何を言い出すか分からなかった私は、スタスタと自室へ引き上げた。
あいつがサッサと部屋へ行ってくれて助かった。
じゃなけりゃ俺は今頃あいつを抱きかかえて・・・。
明日だ。明日まで待とう。
頼雅は両手をあげてグーンと伸びをしながら、自室へ引き上げた。
よかった
よかった、見つけました!
今回はいろいろと大変なことになって・・・
でも、とりあえずよかったです。
お疲れだと思いますが、作品大好きなのでこれからも
頑張ってください。
神谷兄弟シリーズが特に好きなので再掲載うれしいです。