『魔法先生ネギま!』や『ラブひな』など多数のヒット作を産み出してきた漫画家・赤松健先生が1年半振りの連載となる『UQ HOLDER!』を開始した。『ネギま』の最終巻の展開を引き継ぎ、魔法が世に知られて10年が経つ世界で、少年・刀太が冒険に向かうバトル漫画である。
一方、『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』が発売され、“あらゆる意味”でゲーム界隈を賑わせている荒木飛呂彦先生の『ジョジョの奇妙な冒険』。正義のジョースター一族と、悪のディオ一味の世代を超えた戦いを中心に描いた大人気漫画である。ゲームはともかく、新章である『ジョジョリオン』もジョジョファンを唸らせる会心の出来となっており、新刊がいまかいまかと待たれている状態だ。
かたや「ラブコメの王様」とも呼ばれ、萌え萌えなキャラ作りやお色気シーン満載の展開で名を馳せてきた赤松健と、かたや男臭い人間ドラマやグロテスクな意匠が特徴的な荒木飛呂彦。交わりそうもない二人の作品の、意外な共通点を今回はみていきたい。
単なる「続編」と、「ジョジョ方式」の違いとは
『UQ HOLDER!』は誰が読んでも『ネギま』の続編である。そして、人気作の続編というのは珍しくもなんともない。また『ネギま』は尻切れトンボだったという批判も多い。その意味で『UQ HOLDER!』は、『ネギま』のストーリーを埋めるという意味も、『ネギま』の認知度を利用できるという意味でも、続編であるべき作品といえよう。
しかし、『UQ HOLDER!』は単なる続編に留まっているようにはみえない。『ジョジョ』の新章がはじまるときのような感覚、つまりは“ジョジョ方式”にのっとった「ネギま第二部」の始まりを強く感じさせるものになっている(スピードワゴンが「こいつはくせえッー! ジョジョ臭さがプンプンするぜッー!!」と叫ばずにはいられないほどに)。
では、ジョジョ方式とはなにか。キチンと定義付けされているわけではないが、以下のように特徴づけられているといえよう。
・新章になると、前主人公と血縁関係にある主人公に変わる
・章ごとに作品が持つ雰囲気が変わる
・主要登場人物は一新されるが、前章から続いて登場する「案内人」が存在する
具体的にみていこう。
■新章になると、前主人公と血縁関係にある主人公に変わる
そもそも、「続編」において主人公が交代することは当たり前ではない。少年誌に限らず「新章」と銘打って次の展開に持っていく際に主人公が据え置きということは多い。むしろ、作者が丹念に作りあげ、読者にとっても愛着ある主人公を交代することは、非常に高リスクともいえるだろう。『ジョジョ』や『UQ HOLDER!』で主人公が変わったことの方が異例なのだ。
また、『ジョジョ』がジョースター家とディオとの世代を超えた戦いの物語なので、各部の主人公間で親子や祖父と孫といったように濃い血の繋がりがある。『UQ HOLDER!』の主人公はというと、第一話において前作の主人公である「ネギ・スプリングフィールド」が祖父であることがほのめかされている。『UQ HOLDER!』は世代を超えた戦いを描く漫画ということになる。
■章ごとに作品が持つ雰囲気が変わる
『ジョジョ』においては、各部において作品の雰囲気が変わることが特徴的である。直球気味の人間ドラマが熱い第一部、正義のお調子者が活躍する第二部、スタンドが初登場する冒険譚・第三部、……と、作品が持つ雰囲気を変え、読者を飽きさせない工夫がなされている。
さて、『UQ HOLDER!』をみてみると『ネギま』からのコンセプト変更は明らかだ。第1話の表紙で「萌えより燃える!熱くなる!!」というフレーズがはいり、「萌え漫画から燃え漫画」への転換が提示されている。
期待であれ不安であれ、少なくとも新連載への“驚き”を赤松ファンは抱いている。
■主要登場人物は一新されるが、前章から続いて登場する「案内人」が存在する
第三部では第二部の主人公「ジョセフ・ジョースター」、第四部では第三部の主人公「空条承太郎」、第五部では主要登場人物のひとり「広瀬康一」と、前章で活躍したキャラクターが橋渡しとして登場することがわかる。ストーリーの中で世界そのものがリセットされてしまったあとでさえ、最新の第八部では広瀬康一が「広瀬康子」という女性になって“案内人”を務める。
『UQ HOLDER!』でもその特徴がある。雪姫先生という登場人物は『ネギま』の主要キャラクターの一人であった「エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル」その人である。彼女はまるでジョジョ第三部におけるジョセフ・ジョースターのように、新主人公と共に冒険に出発することになった。
一言であらわすなら、ジョジョ方式とは絶妙なバランスで成り立つ「世代交代術」といえる。そして『UQ HOLDER!』は、ジョジョ方式の要素を満たしているのである。これは偶然か必然か。
「ネギま第二部」はしたたかな赤松健の経営術?
『UQ HOLDER!』は意図的に「ネギま第二部」として始動したのか。私たちはまだその真意を確かめることはできないが、最後にひとつ、こんな話をしておきたい。
実は赤松健の代表作『ラブひな』の中に、『ジョジョ』を意識したちょっとした仕掛けがあることをご存知だろうか。 登場人物が旅行中に着ている服の柄が、荒木飛呂彦の事務所「LUCKY LAND COMMUNICATIONS」のロゴになっているのだ。丁寧にも、当時連載していたジョジョ第六部の副題である『STONE OCEAN』の文字まで入っている。
出版社も違うのにも関わらずこうした遊び心を入れてくるあたり、少なくとも赤松健が『ジョジョ』のファンであることは明らかのようだ。
以前シャーティックスでは、漫画制作術と経営術の関係についての記事を書いた。 →『漫画の展開』を考えるのは『企業経営』と一緒!?
赤松健は現在、クラウド漫画サービス「Jコミ」の運営会社の代表取締役である。異色の「経営する漫画家」というわけだ。そんな赤松健が、ジョジョ方式という「経営術」に目を付け取り入れようと考えても、何の不自然もない。
世代交代に成功すれば作品の寿命は劇的に伸びる。実際、『ジョジョ』は通算105巻を数える異例の長寿漫画だ。世代交代の回数は実に7回にもなる。しかし、そんな魔法の薬「世代交代」の調合に成功した作品は多くはない。名作『ドラゴンボール』ですら、孫悟空から孫悟飯への世代交代を試みたが失敗し、連載を終了するに至ってしまった。
くしくも『UQ HOLDER!』は不老不死をテーマにした漫画である。赤松健はジョジョ方式をモノにし、燃えては蘇る不死鳥のような漫画となることができるのか。赤松健の経営手腕に期待したい。