認知症:アミロイドPET 発症前診断に賛否、続く議論

毎日新聞 2014年06月06日 10時02分(最終更新 06月06日 19時22分)

2007年にアミロイドPETでMCI(軽度認知障害)と診断を受けた男性は、大事なことはカレンダーに書き込み、忘れないように気をつけて自宅での暮らしを続けている=中村かさね撮影
2007年にアミロイドPETでMCI(軽度認知障害)と診断を受けた男性は、大事なことはカレンダーに書き込み、忘れないように気をつけて自宅での暮らしを続けている=中村かさね撮影
アミロイドPETによる診断例
アミロイドPETによる診断例

 アルツハイマー型認知症の早期診断に向けた取り組みが進んでいる。検査技術の進歩で、発症前に脳内の異変が察知できるようになったが、必ず発症するとは限らず、現在は確実な予防法も根本的治療薬もない。このため、不安をあおる可能性があるなどとして、検査の利用を拡大していくかどうかについては慎重な議論が続いている。検査の実際と注意点をまとめた。

 ◇ガイドライン作成

 アルツハイマー型認知症は、脳内にたんぱく質の一種のアミロイドベータなどが蓄積して神経細胞が死に、認知機能や生活能力が低下する。こうした脳内の変化は、物忘れなどの症状が表面化する前に始まっている。

 現在の技術でも、脳内のアミロイドベータの蓄積状況を画像で診断することは可能だ。ただし現在、医療現場では研究や治験以外の目的で利用できない。将来、認知症を発症する可能性が高いと分かっても、発症を抑えたり根本的に治療したりする薬がなく、症状の進行を遅らせるなどの対処しかできないためだ。

 こうした現状を踏まえ、医療現場での適切な検査技術の利用に向けた取り組みが始まっている。日本神経学会、日本認知症学会、日本核医学会は合同で、どのような場合に画像診断(アミロイドPET)を実施するのが適当かガイドラインをまとめ、一定の基準を示すとともに、検査の有用性を判断したり、画像を診断したりするための資格要件などを定めた。

 ガイドラインでは、アミロイドPETが有用なケースを(1)アルツハイマー型認知症かそれ以外の疾患か区別が難しい場合の鑑別診断(2)若年性認知症の診断−−などとし、既に症状が表面化した人を対象としている。

 一方、フォローアップができない▽被験者や家族が結果を受け止められない−−など倫理的問題が解決できない場合や、重度▽診断がはっきりしている▽物忘れなどの症状がない−−など検査結果がその後の治療に生かせない人への検査は「不適切」とした。

 とりまとめの座長を務めた、東京都健康長寿医療センター研究所の石井賢二研究部長は「画像は診断の決め手になる」とする一方、「根本治療薬がない中で、早期診断によって生活習慣の改善を図り、治療効果や予後改善が期待できるかは今後の検討課題だ。いたずらに不安をあおったり検査結果が不適切に利用されたりすることにもなりかねず、利用には慎重な判断が必要」と指摘する。

 ◇発症可能性分かる

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