なぜ物価連動債(インフレ連動債)の金利で実質金利を近似できるのか?
 他にもインターネット上に説明がありますが、厳密に説明しようとしているためかわかりにくい・・・

 物価連動債(インフレ連動債)は、インフレによる元本あるいは利息(クーポン)の損失分を補てんしてくれることになっている債権です。
 インフレ連動債の金利を iとすると、インフレ分を上乗せくれてるので、債券価格単位当たり(1円当たり)の利息は、
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   (1)
 となります。Δπ は満期になるまでのインフレの変化幅の期待値です。π+Δπ は期待インフレ率と同じなので、期待インフレ率を πとすれば、インフレ連動債の利子( (1)式 )は次のように表されます。
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   (2)

 このインフレ連動債と通常の普通国債を保有した場合の利益(期待収益、リターン)が同じになるように、それぞれの金利は調整されます(裁定関係。もしどちらかの債権を保有したほうが利益が高いのなら、人々はその債権をより保有しようとするので、金利が下がり、裁定関係が成り立つように調整されます)。したがって、普通国債の金利を iとすれば、
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   (3)
 が成り立たないといけません。
 (3)式を変形すれば、
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   (4)
 となります。

 名目金利(普通国債の金利)と実質金利 r の関係は、次のフィッシャー方程式で表されます。
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   (5)
 この式は実物投資(あいまいな言い方ですが)をした場合の利益(左辺)と、普通国債を保有した場合の「実質的な」利益(右辺)が等しくならなければならない、という裁定関係を表しているとも言えます。
 (4)式と(5)式を比較すれば、
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 が成り立つとわかります。したがって、物価連動債の金利は実質金利と等しくなります。

 実際には、物価連動債の金利と、市場調査などによる期待インフレ率(と名目金利)から求めた実質金利との間には誤差が生じるようです。