結婚してわかった事なんですけど、私の夫は基本的に修学旅行の人です。なんていうんでしょうか、修学旅行の夜って布団に入ってから色々喋りますよね。「好きな人おるん?」的なことを。そういうノリで話しかけてきよるのです。それもこっちが今まさに眠りに入るぞっていう瞬間に絶妙なタイミングでものすごく気になることを話しかけてくる。
たとえば先日なんかは「そういや鼻沢くん(仮名・夫の友達)のアパート、女の幽霊出るんやて」と話しかけてきました。幽霊って。これはただごとではありません。完全に目が覚めちまったよ。バチーンて。バチカーンッて。もしくはバカチーンッてね。武田鉄矢も黙ってないよ。
更に夫は「鼻沢くんが『その女の幽霊、めっちゃ腋の匂い嗅いでくんねん』って怒ってた」みたいなことを言うてくるわけです。なにそのおもしろい幽霊。気になる。鼻沢くんも気になる。全然眠れない。
あと「昔『しょうゆ顔』っていうことばあったやん」とかも言い出すわけ。(ヤングのためにミニ解説をしておきますがその昔顔の濃い人のことをソース顔、あっさりした人のことをしょうゆ顔と呼んでいた時代があったのです。以上ミニ解説おわり)
「でもしょうゆ顔よりもっと薄ーい顔の人おるよな。ああいう顔、なんて呼んだらいいんやろ」みたいなことを眠そうな声で言ってくる。わかる。わかるよ。夫はたぶん深い意味はなく、思いついたことを思いつくままに喋っているだけなんです。そこまで薄い顔の呼び方にこだわってるわけじゃない。でも私はね、考えてしまうんです。そういう性分なんです。
そうだね、たとえば薄口しょうゆ顔とか、いやでも薄口しょうゆは実は濃口より塩分が高いのよね。じゃああれか。水か。水顔か。でもそれじゃ「水商売をしてる人っぽい顔」みたいじゃないか。しかも醤油より薄いのが水って極端だろうが。ええ、お前さん極端すぎるだろうが。ここは水よりもうすこし塩分がほしいところでしょう。そうだッ!
「そうだッ! 『おだし』だッ!」
ってね、閃いた時には夫はもう寝とるわけです。せっかく閃いた「おだしフェイス」という名称を分かち合えないさみしさ。おだし顔の男の人を「だしメン」、女の人を「だしガール」と呼ぶ案まで浮かんだのに、翌朝になったら夫はきっとこの話題そのものを忘れておるに違いないのです。さみしいね。淋しい熱帯魚ですね。Winkに訴えてかけても翔子も早智子も聞いちゃいないしさ。
それからこれは夫のせいではないんですけど、私には「くだらないことを考え出すと止まらない」という悪癖があるのです。ひとつのくだらない考えごとがまた新たなくだらない考えごとを生む、くだらなスパイラル(以下くだスパ)に陥ってしまうんだ。翔子と早智子が出てきた時点でもう午前零時を過ぎてるから。もういい加減寝ないと明日にひびくんです。37歳の体力をなめるな。よしッ寝るぞ! って寝がえり打つと、息子と夫の寝姿が目に入る。普段は「フフ、可愛い寝顔」ぐらいしか思わないのに、なんせくだスパ中だからどうしようもないことをまた思いついてしまう。
「なんか『川の字になって寝る』ってありきたりでつまんないナ」とかね。朝起きて思い出すと、なんであんなくだらないこと考えて睡眠時間を無駄にしたんだろうって激しく後悔するんだけど、くだスパの渦中にいる時にはそれがわからないのです。すでに斬新な「○の字」を真剣に考えはじめちゃってるから。たとえば身体をふたりに平行ではなく垂直にして、「〒」をつくってみたらどうだろうとかね。ふたりのあいだにぐいぐい身体をねじ込んで「H」とか「N」をつくってみたらどうだろうとかね。ちょっと頑張ったら「M」いけるわとかね。あと「川」でもあいだに枕を配置したら「州」になってなかなか斬新なんじゃねえのとか、もうこの段階で午前一時近いです。目の下クマできちゃうよねー。37歳だもんねー。皆もくだスパには気をつけてね! 人生を無駄にしちゃうぞ! チャオ!