Updated: Tokyo  2014/06/06 17:28  |  New York  2014/06/06 04:28  |  London  2014/06/06 09:28
 

日本株で信託銀が存在感、年金変化も-首相はGPIFに催促

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  6月6日(ブルームバーグ):安倍晋三首相は田村憲久厚生労働相に対し、年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF)の運用資産の構成見直しを前倒しするよう指示した。今後政府主導でGPIF改革が加速する可能性があるが、株式市場では既に年金の運用姿勢が変化したとの見方も出ている。

田村厚労相は6日午前の閣議後会見で、安倍首相から3日にGPIFの資産構成見直しを前倒しで進めるよう指示を受けた、と説明。経済・運用環境が大きく変化する中、リスク抑制の観点からもGPIFに早急に要請する意向を示した。政府の有識者会議は昨年11月20日に出した提言で、資産構成見直しは1年をめどに実施すべきだとしていた。

厚労省は6日、GPIFに対し国内株式への投資比重を高めることを念頭に運用方針の見直しを前倒しするよう要請した、と共同通信が同日報じた。GPIF改革を求める動きが鮮明化する中、日本株市場の参加者らは統計データに現れた年金動向の変化を注視している。

東京証券取引所が5日に公表した5月第5週(26-30日)のデータによれば、年金基金の動向などを反映する信託銀行 は5週連続で日本株を買い越した。買越額は2499億円に達し、2009年3月4週(2508億円)以来、5年2カ月ぶりの高水準だ。半面、日本株の売買代金シェアで6割強を占める海外投資家 は119億円の売り越し。5月は5週中、4週で売り越した。

岡三証券の平川昇二チーフエクイティストラテジストは、「推測だが、サブプライムショックによる株価下落時 以来の買越額の大きさから判断し、GPIFか企業年金が買った可能性が高い。日本株比率を上げたのだろう」との見方を示す。

財務省統計で外国株買いの動きも

第5週は、財務省が発表した対外・対内証券売買契約等一覧表でも、外国株の買越額が2771億円と09年3月以来の大きさだった。「2つのタイミングは一致している」と平川氏は言う。

GPIFの日本株比率は昨年12月が17%だったが、ことしに入っての株安で3月末は16%に低下した、と平川氏は推定。「日本経済新聞のインタビューで運用委員長は20%を高過ぎないと発言しており、来年度以降の運用比率に向けてできる範囲で緩やかに近づけている可能性がある」と見ている。

一方、信託銀買いの背景として、企業年金側の動きを指摘するのは三井住友アセットマネジメントの浜崎優シニアストラテジストだ。「2-4月に各年金が代議員総会を開く。昨年は株がかなり上がったので、時価ウエートがかなり上がっているはず。それに基づいてポートフォリオを変えてきているところもある」と浜崎氏。そうした動きが固まり、実際に買い始めるのが大型連休後で、「時間的なタイミングを考えると、こうした企業年金が買いに来ている」との認識を示した。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長は、年金資金が「明らかに株式ウエートのアップに向けて動きだしたということではないか。昨年1年間で海外投資家が15兆円買う中、3兆9000億売った信託銀なので、第5週の動きは明らかにエポック・メーキングな動き」と話す。

異様な強さ

「GPIFは株式のウエートアップ、債券のウエートダウンという方向性は決まっている。その他の年金にとって、GPIFはほとんどベンチマーク」と藤戸氏。5月末の動きだけで判断を下すのは難しいが、「海外投資家が積極的に買っている兆候がないにもかかわらず、今週の相場の異様な強さを見ると、年金のスタンスが変わってきたということではないか」と同氏は指摘し、日経平均株価に対するTOPIXの相対的な堅調さもそうした可能性の1つとしていた。

東証1部全体の値動きを示すTOPIX は4日の取引まで10連騰し、09年8月4日の13連騰以来、およそ5年ぶりの連続上昇を記録。5月月間の上昇率では、TOPIXの3.4%に対し日経平均は2.3%にとどまった。4月の両指数のパフォーマンス差は0.1ポイントだった。

昨年末時点のGPIFの資産構成は国内債券が55.2%、国内株式が17.2%、外国株式が15.2%、外国債券が10.6%など。基本ポートフォリオでは国内債券60%(かい離許容幅はプラスマイナス8%)、国内株式12%(同6%)、外国株式12%(同5%)、外国債券11%(同5%)となっている。

GPIF企画課の平尾智之氏はブルームバーグ・ニュースの電話取材に対し、第5週に株式を大幅に購入した可能性についてコメントを控えた。国内の主な年金資金の運用資産状況は、GPIFが13年12月末現在で128兆5790億円、国家公務員共済組合連合会が13年3月末で7兆5627億円、企業年金連合会は13年3月末で10兆7446億円

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 長谷川敏郎 thasegawa6@bloomberg.net;東京 竹生悠子 ytakeo2@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:Sarah McDonald smcdonald23@bloomberg.net院去信太郎

更新日時: 2014/06/06 16:26 JST

 
 
 
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