THIS WEEK 週刊文春 掲載記事

永田町に帰ってきた“寝業師”
菅義偉元総務相が議運で暴走中

 昨年の政権交代以降、柳田稔前法相の失言問題で久々に存在感を発揮した自民党。石原伸晃幹事長ら「表の顔」が威勢よく発言する一方で、裏舞台でも血がうずくのか、“寝業師”が動き出した。

 衆院議院運営委員会の筆頭理事、菅義偉氏である。

 一般にはなじみが薄いが、永田町で「ギウン」と呼ばれるこのポストは、国会で本会議を開くか、遅らせるかを決める重大な権限を持つ。民主党の小沢一郎元代表も自民党時代に衆院議運委員長を経験し、野党との人脈を広げて飛躍の足がかりとした。

 菅氏といえば三年前の安倍政権誕生の立役者になって以来、総務相、選対総局長、選対副委員長と、三代の内閣にわたって要職を歴任。ところが、昨年の総選挙では民主党新人にわずか五百票差に詰め寄られてしまった。

「政局どころではない、とこまめに地元を回り、永田町ではすっかりカゲが薄くなっていました。強権的で評判も悪かったし、当人にはいいクスリになったんじゃないでしょうか」(自民党関係者)

 それでも勉強会をつくって舛添要一氏を総裁候補に担ぎ出そうと“裏工作”もしていたが、舛添氏は菅氏に一言の相談もなく離党してしまった。ダイエットで十数キロ体重を減らしたのに、重病説が飛び交うなど、まさに踏んだり蹴ったりだった。

「それが菅内閣の勢いが弱まり、議運というポストを得て水を得た魚のようになった。『紙を見ないで質問しろ』と自民党議員を叱りつけた菅直人首相の答弁に難癖をつけ、民主党の議運理事に『このままだと本会議を開かせないぞ』と脅し、古川元久官房副長官と首相の謝罪を引き出した。法相問題で揺れた最中にも、衆院本会議の開会を遅らせて民主党を動揺させる一幕も。テレビに出演して怪気炎をあげています」(政治部デスク)

 もともと秋田から出てきて、小此木彦三郎元通産相の秘書から横浜市議、国会議員になったたたき上げ。修羅場こそが「生きがい」とは自他ともに認めるところだ。

 とはいえ、国会で自民党が攻勢をかけられるのは、参院で与党が過半数割れしているからこそだ。

「参院ばかり目立っているから、衆院でも対抗しようというのが菅さんの戦略だが、ちょっと暴走気味だ」

 と危ぶむ声は自民党国対の内部にもある。久々の晴れ舞台で、“寝業師”の真価が問われそうだ。

「週刊文春」編集部

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