非国民通信

ノーモア・コイズミ

似非科学を批判して反原発派でいられるのか?

2014-06-04 22:44:10 | 社会

反原発派こそが似非科学を批判すべきだ(HuffPost Japan)

人気マンガ「美味しんぼ」の主人公・山岡士郎は、福島第一原発を訪れた後に鼻血を流します。実名で登場する被災地の前町長は、「私が思うに、福島に鼻血が出たり、ひどい疲労感で苦しむ人が大勢いるのは、被ばくしたからですよ」と断言します。これでは個人的な感想をもとに「福島にはもう住めない」といっているようなものですから、風評被害との抗議が殺到するのは当たり前です。

(中略)

今回の事件で気になるのは、「国や東京電力を批判するためなら多少の行き過ぎも許される」という論調が一部にあることです。しかしこんなことでは、原発に反対する主張はすべて似非科学と見なされてしまいます。

「美味しんぼ」の描写は政府関係者をはじめ、原発推進の側から強く批判されています。それだからこそ反原発派は、動機を理由に似非科学を擁護するのではなく、より徹底して批判しなければならないのです。

 

 ……とまぁ、上記のように説く人もいるのですが、問題提起しているようでありながら「問題文の中に答えがある」みたいな類に見えないでもありません。見出しにも掲げられている「反原発派こそが似非科学を批判すべき」云々はともすると真っ当な主張ですけれど、しかし似非科学を批判している人の中に、原発利用にネガティヴな論者はいなかったのでしょうか? 曰く「『美味しんぼ』の描写は政府関係者をはじめ、原発推進の側から強く批判されています」とのこと。本当に? 地元メディアや地元自治体、地元住民の多くから、そして安斎育郎氏からも「美味しんぼ」は批判されていましたけれど、その辺が「原発推進の側」にカウントされるとは、私にはとうてい思えません。

参考、「『脱原発』の人」とは

 結局のところ、「反原発派」及び「原発推進の側」という括りにこそ根底的な問題があると言えます。そしてこの両者を分けるのが、原発利用を巡る賛否ではなく、似非科学やデマ、ヘイトスピーチへの賛否であることを、上記に引用したコラムは期せずして示しているわけです。じっさいのところ原発利用に否定的な人でも「美味しんぼ」の表現や似非科学に批判的な声を上げた人は数限りなくいます。ところが、引用元の著者である橘玲氏は、「原発推進の側から強く批判されています」と語り、批判の声の出所を「反原発派」とは見なしていません。似非科学に批判的な人は、原発利用に否定的でも「反原発派」には分類されない、むしろ「原発推進の側」に見られてしまうようです。

 例えば上で名前を挙げました安斎育郎氏なども「美味しんぼ」の表現を「的が外れている」ときっぱり退けた一人であり本来は脱原発論者の草分け的存在のはずなのですが、「(美味しんぼは)原発推進の側から強く批判されています」「反原発派こそが似非科学を批判すべき」云々と語られてしまうのは、いったいどうしたわけでしょう。やはり原発への態度は無関係である、原発ではなく似非科学やエピソードの捏造への賛否こそが「反(脱)原発派」と「原発推進」を隔てる基準になっているような気がしてなりません。

 実際のところ、放射線について一定の知見があり原発事故後に色々と情報を発信してきた人ほど、原 発 利 用 へ の 賛 否 に か か わ ら ず 反原発を掲げる論者から「御用学者」だの「原発推進勢力」だのとレッテルを貼られて誹謗中傷を受けてきたケースが少なくないはずです。どうにも反原発の人が期待したほど実際の被害が大きくない中で、反原発論者が夢想した架空の健康被害は「美味しんぼ」がそうであるように科学に背を向けない人からは否定されざるを得ない、反原発のために必死で考え出されたエピソードは毎回デマである、根拠のないほのめかしに過ぎないと見破られてしまったわけです。

 こうした中で、原発を(そして福島を!)より危険に見せかけたい人にとって、科学に背を向けない人は自分たちの主張を脅かす目障りな存在でしかなくなってしまったと言えます。結局、原発や電力会社を罵るためであればデマやヘイトスピーチをも辞さない人達が、自分たちに協力的ではない人達すなわち似非科学にも批判的な人を追い出した残りカスによって、今の「反原発」は構成されているのではないでしょうか。原発利用には否定的でも科学を否定していない人達は、言うなれば昨今の「保守」を称する層から目の敵にされている昔年の「保守本流」の政治家みたいなものなのです。

 反原発派こそが似非科学を批判すべきだ、との命題には「似非科学を批判して反原発派でいられるのか」との疑問が付きまといます。繰り返しますが、原発の利用自体には否定的でありながら、反原発派の持ち出す信憑性に乏しい恐怖話を科学的な知見から批判してきたことで、「御用学者」「原発推進勢力」云々と糾弾され、敵視されている人は少なくありません。実際、上記のコラムでも「『美味しんぼ』の描写は〜原発推進の側から強く批判されています」と、似非科学的なこじつけを批判した声は躊躇いもなく「原発推進の側」に括られているわけです。似非科学(及びデマ、ヘイトスピーチ)の批判は、脱原発の理由として語られている論拠の大半にダメ出しすることとなります。似非科学を批判したら、もう反原発派から仲間と見なされることはないでしょう。

 

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キーワード
美味しんぼ ヘイトスピーチ 福島第一原発 ネガティヴ
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