理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーは、STAP細胞の主要な論文を撤回することに同意した。理研が4日、小保方氏から同意するとの書面を受け取ったことを明らかにし、小保方氏の代理人も事実関係を認めた。撤回に反対していた主要著者のチャールズ・バカンティ米ハーバード大学教授も同意しており、英科学誌ネイチャーが論文を取り下げれば研究は白紙に戻る。科学技術立国に向けて研究不正を防ぐ仕組みづくりが課題となりそうだ。
代理人の三木秀夫弁護士は、理研が進めているSTAP細胞を再現する「検証実験に参加するためには(撤回に)応じざるを得なかった」と説明した。小保方氏は本意ではないとして「仕方がなかったんです。悲しいです」と話したという。一方、理研広報室は4日、「再現実験参加を条件に撤回に同意させたことはない」と話した。
小保方氏は論文撤回に同意する書面を3日、共著者の一人である理研の丹羽仁史プロジェクトリーダーに提出した。撤回に同意したのは「アーティクル」と呼ぶ主要な論文で、STAP細胞の作製法や万能性に関する内容。小保方氏ら8人が著者に名を連ねる。
アーティクルの撤回には原則、共著者全員の同意が必要。ネイチャーのニュースサイトは4日、バカンティ教授が5月30日に論文撤回を求める書簡をネイチャーに送っていたと明らかにした。これを受け小保方氏も同意に転じた可能性があるという。ネイチャーの広報担当者は「我々は独自に調査しており(論文を撤回するか)結論に近づいている」とコメントした。
小保方氏はSTAP細胞の存在を主張し、撤回を強く否定していた。今回の同意の背景には、論文の不正で新たな疑惑が相次いでいるうえ、STAP細胞の存在を確かめる再現実験が難航していることがある。
理研関係者は「ここまで出てくるとSTAP細胞の存在は疑わざるを得ない」と語る。理研は3日、論文に掲載した遺伝子データの調査結果を公表。論文でSTAP細胞の遺伝子としていたデータを調べたところ、ほかの万能細胞である胚性幹細胞(ES細胞)が混入した疑いが強まった。
理研が不正と認定した画像の切り貼りなどの行為に加え、新たな疑惑が浮上した格好。科学的証拠から疑問が投げられ、もし裏付けられれば研究自体の存在が完全に消える深刻な内容だ。次々と明らかになる論文の不正疑惑に、小保方氏は撤回をせざるを得ない状況に追い込まれたといえる。
再現実験は思うように進んでいない。「『もう限界』と泣きが入るぐらいだ」(理研関係者)という。ただ理研は予定通り来春まで続ける考え。外部からは小保方氏を再現実験に参加させるべきだとの意見がある。理研の外部識者からなる改革委員会の岸輝雄委員長は「科学者として再現実験させることが責任を果たすことになる」と語る。
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