ここから本文です
[PR] 

栃木女児殺害 勝又容疑者 警察聴取後に車処分 長期化…「DNA」に翻弄

産経新聞 6月6日(金)7時55分配信

 吉田有希ちゃん殺害事件では、殺人容疑で逮捕された勝又拓哉容疑者が事件当初から不審者として浮上しながら、逮捕まで8年半という歳月が経過した。合同捜査本部は早い段階で勝又容疑者に事情聴取も行っていたが、接触後に犯行時に使用したとみられる車を処分されるなど、捜査の長期化が結果的に証拠隠滅を進めさせた格好だ。識者は事件解決を評価しつつも、「科学捜査の偏重など教訓は多い」と指摘している。

 ◆関与引き出せず

 「無職で引きこもりの怪しい男がいる」。事件当初から不審者情報で勝又容疑者が浮上。元親族の男性からも「怪しい」との情報が寄せられていた。

 警察庁のプロファイリング(犯人像推定)でも「現場から5キロ圏内に住む、二、三十代の男」で、当時23歳で現場から数キロの栃木県鹿沼市内のアパートに1人暮らししていた勝又容疑者と合致していた。

 このため、事件翌年の平成18年に合同捜査本部は勝又容疑者の事情聴取に着手した。捜査関係者によると、聴取は数回に及び、事件当日のアリバイなどを聴いたという。だが事件への関与を引き出すことができずに聴取は終了。その後、勝又容疑者は犯行に使ったとみられる白いセダンタイプの車を廃車にした。

 車はスクラップされ犯行車両の遺留品の検証が困難になり、栃木県警の捜査幹部は「車が残っていないのは痛恨だ」と話す。

 また、事件後に勝又容疑者の車にランドセルが積まれていたのも目撃されていた。勝又容疑者はランドセルなどを「ごみ収集に出した」と供述しているが、事件後しばらく所持し、目撃されたランドセルが有希ちゃんのものだった可能性もある。

 こうした情報を早急につかんでいれば有力容疑者となり、早期解決できた可能性があるが、勝又容疑者は捜査線上から外れた。

 ◆県警、異例の謝罪

 有希ちゃんの遺体から犯人のものとみられるDNA型が検出されていた。このため、合同捜査本部は現場周辺の住民などを対象に、口腔(こうくう)粘膜などの任意提出を受け鑑定、不一致となれば犯人ではないという潰しの捜査を進めた。勝又容疑者も対象となり県警に資料を提供したが、結果は遺体についていたものと一致しなかった。

 だが、事件から4年後の21年に遺体のDNAは栃木県警の捜査幹部のものだったことが判明。4年間の捜査は振り出しに戻り、潰した不審者の洗い出しを再び行わざるを得なくなった。

 今月3日の逮捕会見で栃木県警の阿部暢夫(のぶお)刑事部長は「逮捕までに約8年6カ月を要し、おわび申し上げます」と異例の謝罪をした。

 ジャーナリストの大谷昭宏氏は「DNAなどはあくまで補助材料で、聞き込みなどの一般的な捜査と両面でやらないといけない。結果は良かったにせよ今後の教訓とすべきだ。逮捕会見で謝罪したのは『無駄な時間を過ごしてしまった』という後悔の表れだろう」と指摘した。

最終更新:6月6日(金)11時22分

産経新聞

 

PR

ブラジルワールドカップ特集

注目の情報