中3自殺:松竹景虎君が残した夏休みの作文 いじめテーマ

毎日新聞 2014年06月06日 03時00分(最終更新 06月06日 09時32分)

松竹景虎君が自殺する前日の1月7日、ラインで書いたメッセージが残る携帯音楽端末=長崎県新上五島町で2014年5月26日、樋口岳大撮影
松竹景虎君が自殺する前日の1月7日、ラインで書いたメッセージが残る携帯音楽端末=長崎県新上五島町で2014年5月26日、樋口岳大撮影

 長崎県新上五島町で1月に自殺した町立奈良尾中3年の松竹景虎(まつたけ・かげとら)君(当時15歳)が、昨年の夏休みに学校の宿題でいじめをテーマにした作文を書いていたことが分かった。当時、松竹君は日常的に同級生からいじめを受けて悩んでいた。作文では自分がいじめられていることには触れず、いじめが起きる仕組みなどについて書いていた。記述内容は松竹君が学校内で置かれていた状況と重なり、学校や同級生への訴えと言えそうだ。

 作文は、人権を主題にして宿題として出されていた。松竹君は「空気」のタイトルで、なぜいじめが起こるかや、なくすためにはどうすればいいかなどを約2000字でつづっていた。松竹君の死後、学校から両親に返還された。

 両親が同級生から聞いた証言などによると、いじめは昨年の夏休み前の1学期から始まっていた。数人のグループを中心に他の生徒も同調し「陰口を本人に聞こえるように言うなど精神的に追い込んでいくいじめだった」という。松竹君は「自分は嫌われている」と悩み、2学期から無料通話アプリ「LINE」(ライン)で複数の同級生に自殺する考えを伝えるようになっていた。

 松竹君は作文に「いじめの原因は何かを伝えよう。それは『空気』だ。目に見えないものだから恐ろしい。いじめをしなければ自分がやられてしまうという空気……」と書いている。

 また「『あの人嫌い。あなたもそうでしょ?』と言われたら『いいえ』と答える勇気があるだろうか」と問いかけ「もし、少しでも友達が嫌いな子に優しくすれば、そのことを責められ、今度は自分がいじめの対象になるのではないかという不安と恐怖にかられる。それの連鎖がおこるから、周りの人に合わせるといじめがおこる可能性がある」と記した。

 松竹君は成績が良く、学校行事でもリーダー的な存在だった。ある同級生は「目立つことをよく思わない生徒がいて、悪口を言われたと思う」と語る。1、2年時には別の生徒がいじめられ、3年になって松竹君が対象になったという。作文にも「対象者は移り変わってもいじめは続く。人間というのは、自分より下の人間がいなければ不満をもつものだ」と書かれていた。

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