法廷日記

弁護士の日記です。時事問題、法律問題に関して適当に書いています。ペンネームなのであしからず。マリオゴルフワールドツアー始めました。

競合を変えれば勝負は楽になる

勝負事をするときは、個人の能力を上げることも必要だが、勝敗に大きく影響するのは、結局のところ競争相手や環境だ。どんなに優秀な人でも競合が強いところではなかなか勝てないし、逆に凡人でも競争がゆるゆるのところではうまくいくことも多い。

だから商売などが上手くいかないときは、思い切って競合相手を変えてしまうのは有効だろう。

ミネラルウォーターのエビアンが、ペットボトルから化粧水のスプレー缶に容器を変えるだけで顧客単価が跳ね上がった例は有名だろう。これも、競合相手を飲料メーカーから化粧品メーカーに変えたことで成功した事例の一つだ。

僕も開業当初の頃は、競合相手を変えることでかなり楽をしてきた。

弁護士の多くは5~10年程度どこかの法律事務所で経験を積んで独立するのが一般的だ。僕は諸事情により一般的な下積み期間よりもかなり早くに独立することになった。

独立したらお客は自分で探さなければならないわけだが、僕のようなほとんど新人に近かった弁護士が同地域のベテラン弁護士にまっとうに市場で戦って勝てるとはとても思えなかった。

そこで、僕は営業相手を顧客をもてあましている法律事務所に切り替えた。

長年営業している弁護士1人の事務所の場合、事務所を拡大してこうという意識はほとんどない。彼らが新人を雇うときは、基本的には自分ひとりでは仕事がさばききれなくなってきたときである。

しかし、弁護士を1人雇うコストは年間1000万円近くと大変高額であり、当然採用活動のコストもかかる。1千万円以上の売り上げ増加が確実に見込めない限り、そう簡単に雇えるようなものではない。そのうえ、修習を終えた程度の新人弁護士はきちんと育てなければ使い物にならないし、せっかく指導しても元がとれる前に出ていってしまうことも多い。かといって経験弁護士を雇うコストは1000万円では済まないし、そうそう見つからない。

そのため、人手は欲しいが新人を雇うほどでもないという弁護士にとって、僕のように事件単位で使える弁護士は、新人を一人雇うよりはるかにお得なのだ。すなわち、一人ではさばききれない仕事の依頼がきた弁護士は、僕と共同受任することで、売上の機会を損なわずにすむし、僕を使うコスト(この場合は報酬の分配)はその都度限りである。しかも、能力に関する保証はこれから就職する新人弁護士よりも高い。

このように営業相手を人手を欲している弁護士に変えることで、競合相手を実務経験なしの新人弁護士に変えることができた。相手が高コスト、低能力の新人弁護士であれば、勝負は楽勝である。開業当初は、この方式をとることで自分の力ではとれないような事件の経験も積めたし顧客とのネットワークもできた。まあなんだかんだ言って先輩方のお情けの要素も否定できないのだが。

もし僕が、最初からまっとうにベテラン弁護士と市場で戦っていたら、かなりの苦戦を強いられたと思う。競合相手を変えるというのは、楽して勝負に勝つためには有効である。